クルド側から、とんでもない情報が流れてきた。これは中東、なかでも、トルコとシリア、イラクの関係の今後を予測する上で、極めて重要な内容といえるだろう。
その情報によれば、今年一度トルコとクルド、そしてアメリカが秘密会議を開いたということだ。続いて9月にも第二回目の秘密会議が開かれ、三者が合意に達したというのだ。
その秘密会議では、シリアの北部に軍事空港を建設することが、合意されたというのだ。述べるまでも無く、その軍事空港はシリアのアサド体制攻撃のために、使われるということであろう。
またイラク北部の、クルド地域の西部にも、軍事空港が建設されるようだ。そのことは、クルド自治政府のバルザーニ議長が、全面的に認めているということだ。その軍事空港はトルコも使えるだろうし、アメリカも使うことが出来る、という前提ではないのか。
トルコはこの計画推進の上で、制限の無い資金援助を約束し、軍事的にも計画の実現に向けて、支援を送ることに、合意したということだ。
この秘密合意なるものが、本当であるとして、何故そのようなことが、合意されたのかについて考えてみよう。そして、その結果はどうなるのであろうか。
トルコは述べるまでも無く、国内にPKK(クルド労働党)なるクルド・ゲリラ組織を抱え、長期にわたって、膨大な軍事予算と兵士の犠牲を、払い続けてきている。もちろん、一般住民にも犠牲は多数出ている。トルコ政府の発表によれば、軍人一般人を合わせた犠牲者数は既に、4万人にも達している、ということだ。
そこでトルコは関係の極めて良好な、イラク・クルド自治政府のバルザーニ議長と話し合い、クルド国家を設立することに合意し、PKK問題の解決を考えたのではないか。そのクルド国家は、イラクのクルド地区と、シリアのクルド地区から成るものとする、ということであろう。トルコは結果的にPKKのメンバーも、この新生クルド国家に送り込んで、問題解決を図るということだろう。
クルドのバルザーニ議長は、シリアの北部を自分の領土と合わせて、国家を創る事が出来るようになる。その新生のクルド国家は、トルコとアメリカが守ってくれるということであり、イラク中東政府からの脅威無しに、イラク北部クルド地区の石油を、全面的に抑えることが、出来るようになるということだろう。
アメリカはトルコとクルドとの、協力関係が出来ることにより、この地域での安定を図ることが出来、イラク北部クルド地区の石油を抑えることが出来、トルコには応分の褒賞を与えることが出来、トルコという、中東の強力なパートナーが出来る、ということだろう。
その場合、アサド大統領に対しては、地中海岸地域を割譲するかもしれない。そこはアラウイ派国家になるのではないか。そうすれば全てが、丸く収まるということであろう。この地域には1920年代から30年代にかけて、アラウイ国家があったのだから、この選択肢はありえよう。