リビアの革命後の状況は、決して予断を許さないようだ。国会が開催されたが、首相に対する議員の厳しい対応は、安定した政府が今後のリビア再建を、順当に進めていくという雰囲気ではないようだ。
革命が達成したとは言え、リビアの各地にはそれぞれの部族が、私兵軍団(ミリシア)を擁しており、彼らは重装備しているのだ。機関銃やバズーカ砲だけではなく、対空砲から戦車、そしてミサイルまでも所有している、ということのようだ。
こうしたミリシアは、各地の部族が擁しているだけではなく、それ以外の集団も同じように武装している。イスラム原理主義もいれば左翼のような組織も、単なるギャングのような組織も存在するのだ。
このため、リビアでは各地域が中央政府の言うことを、受け付けないケースが多々ある。そのことに嫌気をさして、以前内務相が職を投げ出す、ということも起こっている。
地域であり同時に思想のグループでもある、バニ・ワリードの一団は未だに、カダフィ大佐支持を堅持している。彼らはベニ・ワリードに立てこもり、外部から侵攻して来るグループや、政府軍と戦闘しているのだ。
このバニ・ワリードのミリシアが、カダフィ大佐の敵を討とうとし、シルテでカダフィ大佐が捕まった時に、カダフィ大佐を拳銃で撃ち殺した人物、オマル・ビン・シャアバーン氏を誘拐し、拷問した揚句に殺害している。
彼はミスラタの出身だったが、当然のこととしてミスラタで結成されたミリシア・グループが、報復の報復を行うことになった。そしてミスラタのミリシアが、バニ・ワリードに侵攻したのだ。
このミスラタのミリシア・グループには、リビア政府軍も加担しており、激しい戦闘が続いているようだ。いったい、この執拗なまでの報復合戦は、なぜ起こっているのだろうか。そして、バニ・ワリード側はどうやって、持ちこたえているのだろうか。
想像の範囲を出ないが、このバニ・ワリードには相当の金が、カダフィ大佐によって持ち込まれ、いまだに相当な額が残っているのではないだろうか。また、大量に武器も持ち込まれていたろうから、その一部を密輸しても、抵抗闘争の資金が確保できよう。
部族の誇り、カダフィ大佐への忠誠、現体制への反発、現在の状況への不満といったものがいっしょくたになって、流血を止めようとしないのであろう。逆回転が起こると社会はなかなかその回転を、正規に戻さないということか。