『エジプトの革命無罪は大丈夫か』

2012年10月10日

 エジプトの最大の外貨収入源は、観光業であることは誰もが知っていよう。この観光業は、下は幼い子供のお土産用のビーズ・ネックレスの糸通しから、農家の野菜果物栽培、水タバコ屋のサービス・ボーイにタクシー運転手と、非常に広域にわたって富をもたらしている。

その観光業が栄えるか否かは、サービス施設とサービス精神が重要であることは誰にも分ろうが、もう一つ重要なのは、その国が安全か否かであろう。国家が安全でなければよほどの冒険家でもない限り、エジプトに観光に出かけようとは考えないだろう。

エジプトのモルシー大統領は就任以来、いかに自国の経済を安定させるかに、苦慮しているようだが、他方では、極めて間抜けな政策を、展開し始めているようだ。それは湾岸諸国に対し、安心できるパートナーであるというイメージを、正確に伝えていないということだ。

加えて、アメリカに対しても安心できる、中東のパートナーという気持ちを、抱かせえないでいる。オバマ大統領は記者団にエジプトについて質問を受けたとき『敵でも味方でもない。』と返答したことが話題に上った。

このオバマ発言の真意は『まだ発足したばかりの政府なので、よくわからないから敵とも味方ともいえない。』という意味だったそうだ。

しかし、現在モルシー大統領が進めていることは、エジプトの安全性に大きな疑問を抱かせることではないか。今回の革命のなかで、多くの囚人が刑務所が、破壊されたために脱獄している、その刑務所破壊はムスリム同胞団がやったものだ、と噂されているのだが、脱獄犯のなかには凶悪犯も、多く含まれていたようだ。

そのことに輪をかけて、モルシー大統領は革命中に逮捕された、多くの収監者を釈放することを決定した。加えて政治犯も、多数が釈放されることが決まった。これらのなかには、かつてムバーラク大統領暗殺未遂で捕まった者や、その事件に関連した人物、サダト大統領暗殺に関与した人たちも、含まれているということだ。

モルシー大統領にしてみれば、革命や政治で投獄されていた人たちを釈放することは、国民の人気取りには、一時的にはいいかもしれないが、時間が経つにつれて、革命で捕まった人たちや、政治犯で捕まっていた人たちを釈放することがもたらす、マイナス面が分るようになっていくだろう。

『革命無罪』は実に馬鹿げた安易な政策ではないのか。