『モルシー大統領の演説は顰蹙モノ』

2012年10月 7日

 エジプトの第四次中東戦争の記念日は106日だが、この記念日にモルシー大統領は彼の就任以来、100日の行動の成果を発表した。

しかし、その内容は決して、聴衆の関心を引くものではなかったようだ。それどころか、配慮の足りなさ、話のスケールの小ささ、成果の無さにあきれた聴衆が、多かったのではないか。

モルシー大統領は彼の就任以来、100日間の成果について、家庭用ガスの普及問題を取り上げている。ガスのシリンダーの値段が5エジプト・ポンドだが、その原価は65エジプト・ポンドだと語っている。

しかし、それは彼の成果であろうか。以前からガスのシリンダーの価格は、そんなものではなかったのか?そして、シリンダーの原価を語ることによって、国民にあたかも自分の国民思いの政策の成果だ、とでも言いたいのであろうか。

モルシー大統領はもう一つの成果として、彼が11日間で9カ国を訪問したことを披瀝している。エチオピア、中国、アメリカとは語ったが、湾岸諸国については触れていないようだ。

これらの訪問の成果については、100億ドルの援助と投資を呼び込んだ、と語っているが、その成果は何も出ていないようだ。そして、IMF からの48億ドルの借り入れも、まだ定かではないが、1.1パーセントの金利について高利ではないと弁明している。この件については、高利であるか否かではなく、ムスリム同胞団の政権が、シャリーア(イスラム法)に反しているではないか、というのが国民の率直な気持ちであろう。

あるエジプトの保険会社のトップは『言い訳だけの演説であり、国民に何も約束していない。』と批判している。その通りであろう。その場を誤魔化す、小市民的話題ばかりではないか。

道路を清掃する、治安を改善する、ガスを供給をする、パンを供給するというのが、演説の骨子だったのだから。

エジプト国民がモルシー大統領に期待したのは、希望の持てるエジプトの、未来像だったのではないのか。なにやら彼が日本の政治家に、似ているような親近感さえ、覚えるのだが。