私がイランを訪問してから、もう2年ほどが過ぎているのであろうか。当時のイラン・リヤルのドルとの交換レートは、確か9000リヤル台であったと思う。それが最近では、30000リヤル台にまで下落している。
最近では、一日で10~20パーセント下落という例もあるが、昨年と比べ80パーセント値下がりというのは、もう時間との勝負で古い情報になりつつある。今週の火曜日には1ドルに対し、37500リヤルという最底値を付けているが、今日のレートはそれよりも、下げているものと思われる。
このリヤルの暴落については、これまで政府が仕掛けたものだという説と、町の両替集団が仕掛けたのだという説とがあるが、やはり何と言っても欧米主導の経済制裁が、リヤル暴落の最大の原因であろう。
イランの金持ちたちは、これを防止するためにドル買いに走り、外国の高価な製品を買うことで、リヤル暴落の損失から免れようと思っている。例えば、いまイランではポルシェが大人気なのだそうだが、それは乗って楽しむよりも、財産保全を目的としているのだ。
イラン国民は外国に出る場合、5000ドルまでの外貨持ち出しが許可されているが、これは時間の経過とともにもっと制限される可能性もあろう。
ところで、欧米がイランに対し経済制裁を強化させたのは、イランの核開発阻止のためであり、具体的には核兵器の開発を阻止するためだが、経済制裁によってイランの国内経済がダメージを受け、輸入物資の高騰が全ての物品の値上がり、つまりインフレにつながれば、イラン政府は欧米の圧力に、屈することになるかもしれない。
それは武器を使わない戦争であり、経済戦争ということであろう。もしこの欧米による経済戦争が勝利した場合、欧米は其の他の反欧米的な国に対しても、同じ作戦を実行する可能性があろう。
例えば北朝鮮がその一つであろう。また中国についても、例外ではないのではないか。もちろん中国の経済規模が大きくなっているために、もし経済制裁を発動すれば、欧米もその被害をこうむることになろう。
したがって、中国の場合はそう簡単に、発動するわけにはいかないだろうが、何らかの類似した方法が、とられることもありえよう。例えば、中国通貨の切り上げ要求がその一つだ。
これまで中国は日本を含む欧米先進国から見て、低賃金、通貨安、巨大な市場の可能性を持った国であった。しかし、最近では賃金が上昇していることに加え、もし通貨が上がれば中国のうまみはなくなるということになる。そうなれば経済は悪化するということだ。それが新しい戦争の形であろう。