『マリキー首相が米イランを仲介』

2012年10月 1日

 アメリカの大統領選挙が近付くなかで、アメリカやイスラエルによるイラン攻撃が、声高に語られる昨今だが、実態はどうなのであろうか。イスラエルはアメリカの大統領候補が、選挙を前にイラン攻撃を支援しないわけにはいかないから、攻撃のチャンスと考えている、といのがその根拠だ。

しかし、どうも流れはそうではないようだ。国連でのイスラエルのネタニヤフ首相の発言は、アメリカ選挙の前にという内容ではなかった。イスラエルがイランを攻撃するとしても、まだ先の話であろう。

そうしたきな臭い情報が飛び交うなかで、新たな情報が伝わってきた。その内容は実に興味深いものだ。イラクのアリー・シスターニ師とイランのカーズム・ハーイリ師が、揃ってイランのハメネイ師に対し、アメリカとの緊張を解くように、助言したというのだ。両者はシーア派学者としては最高位に位置する、アヤトラ・オズマであるだけに、ハメネイ師もその助言に、耳を傾けないわけにはいくまい。

二人の学者はシリアの反体制派に対し、武器がどんどん届いており、シリア政府軍はやがて敗北するだろう。そうなれば、イランの権益もイラクのシーア派政権も、窮地に立たされるというのだ。

そこでイランは以下のことを、実行すべきだとしているということだ。

1:核計画を今後10年間凍結する。

2:レバノンのヘズブラはイスラエルとの国境に、レバノン正規軍が配置することを認める。

3:イランとイスラエルは敵対関係を止める合意を交わす。

 こうした、極めてデリケートな合意を交わすべきだとした裏には、シリアの状況がある。シリアでは反政府側に外国から大量の兵器が届いており、シリア軍の空軍基地が攻撃されたり、シリア軍機が撃墜されている。

 この状況が続けば、やがてはシリアのバッシャール・アサド体制は崩壊する。そうなれば、スンニー派が勢力を増し、レバノンのヘズブラは潰れ、シリアはスンニー派の国家になり、イランにとってもイラクにとっても、極めて不利な状況が生まれる。

 この危険はトルコとエジプトが接近していること、それに湾岸諸国が加わっていることにある。そうなれば、イランは湾岸地域での勢力を落とさざるを、得なくなるということのようだ。

 この情報が既にアメリカの議員を通じて、アメリカ政府に届いているものと思われる。今後の展開が見ものだ。