『現地で聞くモルシー大統領評は最低』

2012年9月30日

日本では貧民救済などの慈善活動をしている、穏健派イスラム原理主義のムスリム同胞団、政治面では民主的なイメージで捉えられているが、現地で種々の人たちの話を聞いてみると、まるで違うようだ。

まず驚くのは、大衆が公然と大きな声で、モルシー大統領を非難しているということだ。友人たちが何人か集ると、決まってモルシー批判が飛び交うことだ。誰も遠慮をしていないことが、その場にいれば分かろう。

友人の一人が教えてくれたのは、モルシー大統領がテレビ番組に出演したところ、女性アナウンサーが『コマーシャルの時間です黙って。』とモルシー大統領の発言を、さえぎったというのだ。ムバーラク大統領だったら、そんなことを誰もしなかった。一定の礼儀を守って、対応していたと語っていた。

モルシー大統領は大統領選挙で、ほぼ半数を対抗馬のシャフィーク氏が取ったことも、脳裏に刻み込まれているのではないか。つまり、エジプト国民の半数が反モルシーだったということだ。

そればかりか、最近では大統領決選投票で、ムスリム同胞団が投票用紙を、選挙委員会の関係者から買い、600万票投票したということが語られている。そうでなければ、2600万票という投票数は、ありえなかったというのだ。

第一回の選挙で敗れた立候補者たちの支持者たちは、二回目の決選投票に行かない人が多いだろう。現実に決選投票の日、投票所はがらがらだったというのだ。

しかも、テレビでは最終日の夕方になって、まだ投票率は40パーセントにしかなっていないので、投票するようにと呼びかけていたというのだ。こうしたことを踏まえ、友人はモルシー氏の当選は、捏造されたものだと語っていた。

モルシー大統領の国連初演説も、相当酷い内容のようだった。見かねたビル・クリントン氏が助言したという話もあるし、国連に出席していたトルコの友人は『あれは大統領の演説ではない。』と極評していた。

ムスリム同胞団内部でも、痺れを切らし始めている幹部が多数いるようで、モルシー大統領批判がムスリム同胞団内部からも、漏れ始めているということだ。これに業を煮やしているのは、最初にムスリム同胞団が大統領に立候補させ、選挙管理委員会が立候補を認めなかったシャーテル氏だ。

シャーテル氏のムスリム同胞団内部の序列が、モルシー大統領よりも上であることから、彼の下で首相になることを拒否したようだが、今後は引き受けるかもしれない。それはトルコの大統領と首相との関係と同じ様に、首相が主導権を握るという、前提ではないのか。エジプトの政治は、これからが興味深い。