『預言者映画への抗議デモと賢明なイスラム学者の発言』

2012年9月22日

 イスラム教の元祖預言者ムハンマドを、中傷する内容の映画が、アメリカで製作された。この映画のごく一部を見たが、決して普通の(まともな)映画とは思えない。

私に言わせればその出来栄えは、4流のエロ映画のレベルでしかないのではないか、と思われるのだが、世界中のイスラム教徒にとっては、極めて不愉快なものとなったようだ。

このため、世界中のイスラム教徒によって、この映画に対する抗議デモが行われ、いまだに続いているが、考えようによっては、デモを行うことにより、この映画が預言者ムハンマドを中傷するものだ、とイスラム教徒自身が認めていることに、なるのではないのか。

この映画に対する抗議デモで、既にイスラム諸国のなかから、死者や負傷者が出ている、というニュースが伝わってきている。デモ隊に対する発砲でパキスタンでは16人が死亡したということだし、ほかの国でも死者が出ているのだ。そのニュースにほくそ笑んでいるのは、イスラムの敵側の人士たちであろう。

『イスラム教とは野蛮だ』『イスラム教徒たち同士が殺し合いをしている』といった風に、受け止めているのであろう。そのことは、イスラムを敵とみなしている人たちにとっては、彼らの側に賛同者を得ることにも繋がろう。

確かにイスラム教徒にとっては、極めて不愉快なことではあろうが、敢えてこの映画を無視する姿勢の方が、正しいのではないかと思われる。そこで問われるのは、イスラム学者や指導者たちの判断と発言だ。

これまで目に留まったのは、トルコ人のファタハッラー・ギュレン氏の発言と、サウジアラビアのムフテイであるシェイク・アブドルアジーズ・アールシェイク師の発言だ。二人は過剰なイスラム教徒の映画への反発を、自制するよう呼びかけている。

 しかし、イランやその他の国のイスラム学者たちは、大衆の怒りの炎に、油を注いでいるのではないか。結果的にイスラム教徒がイスラム教徒殺傷し、建物が破壊されることになる。それがイスラム教徒に何のプラスを、もたらすというのか。

 世界がいま混乱の度を増している中で、問われるのは賢者たちの、大衆に対する良導であろう。イスラム世界で起こった、アメリカ製の安手のエロ映画反対デモばかりではない。領土問題への抗議デモもしかりであろう。

 混乱はこれから世界中で、ますますその度合いを強めていこうが、だからこそ、冷静な判断と対応が求められるのだ。大衆の興奮を煽るような言動を、国をリードする立場の人間が行うようでは、その国は4流国ということになろう。