数日前にシリアのマナーフ・トラース氏の立場を書いたが、その後の彼の発言に、微妙なニュアンスが含まれているような気がする。いったい彼はいまのシリアの状況を、どう考えているのか、彼はどう身を処す気なのかを、考える材料になりそうだ。
マナーフ・トラース氏の発言とは『私はフランスの情報部員によって、シリアから国外に連れ出された。』というものであり、もう一つの発言は『シリア危機は、外国の介入によっては解決しない。』という内容だ。
つまり、簡単に行ってしまえば、彼は自分の意思ではなく、フランスの意思で国外に連れ出された。そして、フランスを始めとするア諸外国の、シリア問題への介入は、問題を複雑化することはあっても、解決に導くものではない、ということであろう。
何故彼がいま、バッシャール・アサド体制擁護ともとれる、発言をしたのであろうか。以前に書いたように、シリア国内に残っている彼の、家族や親族の身の安全を考慮した、発言の可能性に加え、その意味するところは、アサド体制が、何らかの形で残存しうる、という判断によるのではないか。
アメリカとロシアの密約が、一部で流れている。そして、もう一ついま流れているのは、シリアの国土分割の噂だ。その噂によれば、シリアはアサドが支配する地中海沿岸地域と、クルドが支配するシリア北部地域、そしてスンニー派が支配する地域と、三つに分割されるということになる。
シリアの分割案が、単なる噂なのかどうかについては、今の段階ではまだわからない。しかし、そうした問題の解決もありうるということは、頭に入れておいた方がよさそうだ。