国境なき医師団という国際組織があるが、そのメンバーであるフランス人のジャクー・ベレー医師が、シリアから帰国して語ったところによれば、彼がシリアで治療を施した2度の訪問のなかで、治療した負傷者の半数がシリア人ではない、外人だったというのだ。
しかも、この外人の戦闘員たちはバッシャール・アサド体制を、打倒することは全く考えておらず、シリアの混乱のなかで、イスラム・テリトリーを確保することに、目的があるというのだ。
つまり、シリアが戦闘状態であるなかに入っていき、そこで戦闘に参加し、ゆくゆくはシリアをイスラム国家にしたい、シャリーア法(イスラム法)によって統治される国家にしたい、というのが目的のようだ。
シリアで戦闘に参加する戦闘員の中には、フランスの二人の若者もいた、と同医師は証言している。同様の証言は、シリアを取材した外国人ジャーナリストによっても、もたらされている。
外国からシリアに入って戦闘を展開しているのは、外国から来た一般の戦闘員に加え、ベテラン・ジハーデストと呼ばれる戦闘員たちで、アフガニスタン、イラク、リビア、チェチェンなどで、戦闘を経験しているジハーデストたちだ。
彼らはあくまでもイスラム国家を設立することに、目的があるというのだが、実際には戦闘(殺戮)に加え、現地人のパン屋を殺害したり、物品を強奪したりもしているようだ。
このニュースはイスラエルの、ハアーレツ紙がもたらしたものだが、それはイスラエルにとって、隣接する地域にイスラム国家が成立することが、いかに危険か分かっているからであろう。
シリアのバッシャール・アサド体制を打倒することは、現在、アメリカとヨーロッパの共通の目標になっているが、シリアにもしイスラム国家が出来た場合、その影響は周辺のアラブ諸国にも、及ぶことは述べるまでもあるまい。
アメリカやヨーロッパ諸国が、ヨルダン、サウジアラビア、トルコ、クウエイトといった国々の体制を、弱体化させたいというのであれば、現在シリアで進められていることは、一定の理屈にかなおう。
しかし、そうではなくこれらの国々の体制を、守りたいというのであれば、全く逆の活動を行っているということであろう。アメリカの意向でサウジアラビアやカタール、トルコが、シリアのバッシャール・アサド体制打倒に力を貸しているのは、自殺行為ということになるのではないのか。