アメリカの大統領選挙が近づき、それぞれの候補は在米ユダヤ人の力を借りようと思い、イスラエルにすり寄った発言の、レベルを上げている。そして、遂にはオバマ大統領をして『イスラエルのイラン攻撃に反対しない。』という言葉を口にさせた。
もう一人のロムニー候補は、最近行ったイスラエル訪問時、自分がアメリカの大統領になったら、イラン攻撃を全面支援する、とまで語っている。
しかし、イスラエルの元情報機関のトップや、アメリカ軍のトップのなかには、イスラエルによるイラン攻撃に、強く反対する者がいることも事実だ。数日前、イスラエルがイランを攻撃した場合、イラン側からの反撃でイスラエルは巨額の被害を受けるという予測も、報告されている。
イスラエルの学者文化人グループは、イスラエル空軍のパイロットたちに対し、イラン空爆に参加することを拒否するよう、呼びかけてもいる。つまり、イスラエル国内にはネタニヤフ首相が、イラン攻撃を真実味を持って語れば語るほど、戦争反対の意見が大きくなってきているということだ。
それは当然であろう。イランは何としてもアラブ諸国のなかに獲得した、シリアとレバノンのヘズブラという組織を、手離したくはない。その二つを使いイランは今後、アラブ諸国全体と西側諸国に対して、恫喝をすることができるからだ。
しかし、アメリカの大統領選挙が11月に迫ったいま、イスラエルのネタニヤフ首相は9月後半から10月が、イラン攻撃を実施する唯一の期間、と踏んでいるようだ。その期間が過ぎれば、イスラエルが軍事攻撃を仕掛けた場合、核施設の燃料が爆発し、放射能が周辺諸国全体に拡散する危険性が高いため、とても軍事攻撃はできなくなる、ということではないのか。
だが、イスラエルのネタニヤフ首相はいま、もう一つの大きな国内的抵抗を受け始めている。それは、イランとの戦争が始まった場合、いったい誰がイスラエル国民のなかの、身体障害者の安全を守れるのかという問題だ。
イスラエルにはいま、30万人の身体障害者がおり、彼らは戦争が起こった場合、とっさの退避ができない状態にあるということだ。ガスマスクを装着するのも、退避壕に入るのにも、誰かの介護が必要だということだ。
それでもネタニヤフ府首相はイラン攻撃を、強行するのだろうか。もしそうすれば、彼は人否人とののしられることになるのではないか。そもそも、イランは核兵器を造らないと言っているのだ。言いがかりで戦争をはじめ、その結果、周辺諸国に放射能が飛散し、世界経済が大きなダメージを受けることになれば、イスラエル国家そのものの存在が、危ういものになろう。それが分らないほど、ネタニヤフ首相は狂気とは思えないのだが。