イランの最高指導者であるハメネイ師が、イランの首都テヘランで開催された、非同盟諸国首脳会議で演説をした。その内容は、極めてノーマルなものであったと思われる。
ハメネイ師は世界がいま、大きな変革期にあるとし、非同盟会議などが新たな役割を、担うべきだと語っている。彼によれば、世界は冷戦の時代を過ぎた後、大国一国(アメリカ)による支配の試みは、失敗に終わっている。したがって、これからは世界が新たな道を、見出していかなければならない、という考えだ。
ハメネイ師が提唱する新たな時代とは『全ての国家が参画し、平等の権利が保証されたなかで、世界政治が決められて行かなければならない。』というものだ。そうした状態を創り出していくためには、各国間の連帯と協力が必要だ、とも力説している。
全くその通りであろう。世界はいま大きな変革期に直面していることは、誰もが認めることであろう。そして新たな時代とは、世界の国々が参画し、平等な立場で意見を出し、公平に合意を生み出していくことであろう。
しかし、それは理想論であって、実現は極めて困難なものであることも、もう一つの現実だ。過去に国際連盟が創設され、次いで国際連合が創設されたが、結果的には大国の支配が続いてきているし、各国間のエゴの主張のしあいでしか、なかったのではないか。
ハメネイ師がもしこの理想論を披歴するのであれば、彼なりの実現可能な方向性も、併せて打ち出すべきではなかったのか、と思われるのだが。
面白いことに、テヘランで開催された非同盟諸国首脳会議で、ハメネイ師と並んで演説をした、アハマド・ネジャド大統領は、ハメネイ師の演説を完全に無視したそうだ。
他方、ハメネイ師もアハマド・ネジャド大統領の演説を、全く評価しなかったと伝えられている。つまり、ハメネイ師の理想論はイランの権力中枢においてすら、反発を生み出している、ということではないのか。
我々がハメネイ師の演説から、学ぶものがあるとするならば、ハメネイ師が口にした、世界の現状に対する分析は、正しいということであろう。同時に、その現実の問題点を解決していくためには、世界中の国々が平等な立場に立ち、対等に意見を述べ合って、合意を生み出していく、ということであろう。
そして、それは極めて実現が困難なものであるということを、知ることではないのか。理想論は人類の長い歴史のなかで、何万人何十万人の哲人たちによって、示されてきた。しかし、何の解決も生みださなかったのが現実であろう。