大分早い段階から、ヨルダンの王制は危険な方向に向かい出した、と警告してきた。この私の意見に対して、大方の人たちは反対意見を述べていた。その根拠は、『ヨルダンの国王が英明だから』というものだった。
しかし、今回の一連のアラブの春革命による、権力の打倒劇を見ていると、打倒されるに至るには、大まかに言って、二つの理由があったことが分ろう。
一つは権力の長期化による独裁と汚職だ。大統領その人にも責任の大半があったが、それ以外には権力者の家族による汚職だった。チュニジアの大統領夫人、エジプトの大統領夫人と子息たち、リビアの場合も同じように、子息たちに問題があったようだ。
ヨルダンの場合も、大分前の段階から国王夫人の横暴が、問題視されてきていた。しかし、ヨルダンは厳しい王家に対する、批判阻止構造が出来ており、表面化し難かっただけのことだ。
しかし、アラブの春革命が次々と、アラブの体制を打倒していくと、それまで抑え込まれていた各国に、動きが見えてきている。ヨルダンもその例外ではない。同国の場合、主にムスリム同胞団の動きと、ベドウイン部族が問題の核心であろう。
それ以外に、ヨルダンの若者たちの運動が、活発化してきてもいる。ヨルダンのムスリム同胞団について述べれば、ムスリム同胞団発祥の地であるエジプトに習い、次第に活動を活発化させてきている。
ヨルダンの場合も、ムスリム同胞団は穏健な動きを装っており、決して過激な行動には出ていない。現段階では、政府が実施しようと考えている選挙を、遅らせる作戦を、執っているようだ。それは、選挙をより有利に、戦うためのものでしかない。
ムスリム同胞団はヨルダン国内にあって、最も整備された組織であり、選挙を公正に実施すれば、絶対的な優位を占めることになろう。加えて、部族の動きだが、王家の保護役であったベドウインの部族が、今では国王夫人の横暴により、王家に対して、敵対的関係に回っている。
ベドウインの部族長たちは、国王夫人が彼らの土地を勝手に取り上げ、転売して何の保証もしなかったことに、怒り出したのだが、最近では政治的な要求も、するようになっているということだ。つまり、経済問題が政治問題にまで、拡大しているということであろう。
加えて、ヨルダンではムスリム同胞や、ベドウインの各部族だけではなく、左翼、民族派、青年組織などが反政府運動を展開し始めている。この国も今年後半から来年にかけて、相当混乱するのではないか。