シナイ半島の地中海側にあるエルアリーシュで、8月5日ミリタントがエジプト警察を襲撃し、16人を死亡させるという事件が起こった。このことはエジプト側に、少なからぬ影響を及ぼした。
軍の不始末の責任を追及し、モルシー大統領はタンターウイ国防相とサーミアナン参謀総長の首を刎ね、後に大統領顧問に就任させている。そうではあるが、この事件がエジプト軍に与えた影響は、少なからぬものがある。多くの人々はモルシー大統領の決断を、クーデターとも呼んでいるほどだ。
その後、エジプト政府とガザのハマース政府が協議し、全面的な秘密トンネルの閉鎖が決められた。しかし、いまでも一部は機能しているようだ。そうでなければ、ガザの住民が必要な、最低限の物資が手に入らなくなるし、ガザの秘密トンネル経由のビジネスから徴税していた、ハマース政府は税金が入らなくもなるのだ。
ハマースが秘密トンネルをガードして、管理してきていたわけであり、何処に秘密トンネルがあるのかを、ハマースは正確につかんでいよう。一説によれば、1500の秘密トンネルが掘られているということだ。
ハマースはガザのムスリム同胞団の指導者であったヤーシーン氏存命中に、設立された行動隊組織(ハラカトムスリムーン=ムスリム運動)であり、ムスリム同胞団そのものなだ。
エジプトの現政権がムスリム同胞団であり、ガザのハマースがムスリム同胞団を母体としていれば、当然のことながら、ガザのハマース側はエジプト政府の言うことを、聞かないわけにはいくまい。
そもそも、エルアリーシュでのテロは、どうして起こったのであろうか。諸説あるが、真相は未だに明らかになっていない。一説によれば、元ガザの治安責任者であったムハンマド・ダハラーン氏が、ガザのパレスチナ人をリクルートし、イスラエル側に送り込み訓練を受けさせ、彼らが秘密トンネルを通ってエルアリーシュに抜け、犯行に及んだというのだ。
その理由は、ガザのハマースとエジプトのムスリム同胞団政権に対して、イスラエルが楔を打ち込むことに、目的があったのであったろうと言われている。
真相は未だに不明だが、ガザの住民にとっては、大迷惑な話であろう。その後、ガザ側の代表団がエジプトに入り、国境にフリーゾーンを設置することを提案したが、エジプト政府側は二つのパレスチナ国家を、創るわけにはいかないので、パレスチナ自治政府から要請された場合に、検討すると答えたということだ。
結果的に、ガザ地区住民は当分の間、生活物資に事欠くであろうし、ハマース政府は徴税額が激減し、大変な台所事情に陥ろうということのようだ。