いまイスラエルの国内は、不安の絶頂にあるようだ。イランが進めている核開発は、最終的には核兵器の開発が目的であり、イランが核兵器を手にしたときに、それで攻撃されるのはイスラエルだ、と信じ込んでいるからだ。
イランが核兵器を持ったとしても、イスラエルを突然攻撃することなどあり得ない。イランはすでに核兵器を持つ意思の無いことを、世界に向けて宣言している。ハメネイ師も何度となく、核兵器の非人道性を挙げ、持つ意思のないことを主張している。
それにもかかわらず、イスラエルはイランの核兵器開発と、それによる自国への攻撃を、信じ込んでいるようだ。イスラエルはこのため、イランの核兵器開発が、どの段階まで進んでいるのかを、あらゆる筋を通じて、情報集めをしてきた。
結果は、イランは非常に近い将来、核兵器を手にする、ということのようだ。そうなると、どうしてもイランが核兵器を完成する前に、潰さなければならない、という結論に至ることになる。イスラエルのネタニヤフ首相やバラク国防相は、このためアメリカに働きかけ、イラン攻撃に参加してくれるよう、説得してきている。
しかし、アメリカはなかなか重い腰を、上げようとしてはくれない。そこで、ネタニヤフ首相とバラク国防相は、イスラエルによるイランに対する、単独攻撃を真剣に、検討しているようだ。
だが、イランに対して攻撃をするということは、イスラエルも応分の戦費と、犠牲を伴うということになる。ネタニヤフ首相が考えた、戦争継続可能な期間は、30日間ということのようだ。
この30日間の戦争で、イスラエル国民の間に500人程度の死者が出ると予測している。また戦費については、420億ドル程度ではないか、と予測されている。それはイスラエルがイランやヘズブラ、シリア、ハマースなどから受ける攻撃によって発生する、インフラの破壊などは含まれず、あくまでも兵器代のみではないのか。
いずれにしろ、イランに対する攻撃は開戦後に、アメリカが支援してくれたとしても、簡単ではあるまいし、イスラエルが失うものは、多いのではないか。戦争によって世界経済は大打撃を受け、イスラエルは世界中からその責任を問われようし、イランの核施設は破壊できても、イラン人科学者の脳内にある知識は、消し去ることができない。単なる時間稼ぎであり、核兵器生産を遅らせる効果しかないのだ。
そこで迷ったのであろうか。イスラエルの国家治安局長ヤアコウブ・アミドロール氏、内相、シャス党の政治トップのエリ・イシャイ氏らが、シャス党の宗教指導者であるラビに、イラン攻撃について可否を仰いだようだ。結果は『イランには悪魔にとり憑かれた者たちがいる、撃つべし。』ということだったようだ。
悪魔はイランのなかにいるのではなく、イランを仇敵と信じ込んだ、イスラエル国民の一部のなかに、いるのではないのか。