チュニジアに始まりエジプト、リビアと続いたアラブの春革命は何をこれらの国々にもたらしたのであろうか。そして、それに続くイエメンやシリア、バハレーンはどうなっていくのであろうか。
一言で言えることは、チュニジアもエジプトもリビアも、革命達成とは言うが、その後何の進展もないということだ。各国でほぼ明らかになったのは、イスラム系組織が地下活動で、抵抗運動を継続してきていただけあって、結束力や組織力で他の組織に勝っており、革命達成後は政治の中心舞台に、乗り出してきたことだ。
しかし、これらのイスラム組織も、統治の経験は無く、国家が抱えている問題が何なのかということを、正確に把握していないようだ。規模から行けば、チュニジアやリビアは、アラブの革命の目標であった、民主化達成が最も容易な国のはずなのだが、現実は全く逆であり、なんら民主的なものは芽生えさえ、してきていないのだ。
インテリの数では、アラブで一番のはずのエジプトでも、民主化が逆行することはあっても、前進する状況には無いようだ。マスコミ界への政府の圧力で、新聞の発禁や人気テレビ・キャスターの番組降格などが、次々と表面化してきている。
他方、暴力を振るう自由だけは、実現したのであろうか。チュニジアではイスラム原理主義者たちが世、俗派の国民に対し暴力を振るって、自分たちの考えを押し付けようとしているし、男女差別も露にしている。
リビアでは部族単位のミリシアが市中を闊歩し、些細なことから銃撃戦が起こってもいる。そうした雰囲気はリビア国内にある、外国施設に対する襲撃事件として、時折マスコミをにぎわしている。
赤十字のスタッフが襲われたり、国際刑事裁判所の弁護士が誘拐されたり、外国の大使館や領事館が襲撃のターゲットとなっているのだ。
エジプトのシナイ半島で起こった、警官16人を殺害するという事件も、考えようによっては、アラブの春が生み出した、結果かもしれない。エジプトではそればかりか、ムスリム同胞団のメンバーや、サラフィストのメンバーによる、世俗派の言論人や議員、一般人に対する嫌がらせや、暴力事件が頻発してもいるのだ。
こうした雰囲気のなかで大衆は、各々が自分の安全を守る策を講じている。評論家が評論活動を控えたり、テレビ・キャスターが番組から降板するのは、その現れであろう
つまり、いままでのところアラブの春革命は、庶民に対して何等メリットを、もたらしていないということだ。アラブの春革命が大衆にもたらしたのは、混乱とインフレと、失業と犯罪であろうか。革命の前にそれを、誰が望んでいたのであろうか。