『ウオーモンガー・戦争を待望する人たち』

2012年8月16日

 ウオーモンガーという言葉がある。戦争を待望する人たちのことを言うのだそうだが、そんな人種がいるのだろうかと思うのは、日本人だけかもしれない。世界中にはいろんな人たちがおり、いろんな考えを持っているのだ。

一時期騒がれた、イスラエによるイランへの軍事攻撃の話題は、しばらくの間下火になっていた。あるいは平和主義者の日本人の間では、すでにその話題は、忘れ去られていたのかもしれない。

しかし、ここにきてまた、イスラエルがイランへの軍事攻撃を、話題にし始めている。アメリカのパネッタ国防長官が、イスラエルを訪問した際に、イスラエル政府側は事細かに、イランの核兵器製造の危険性を訴えたようだ。

ロムニー大統領候補の訪問の折にも、イランの核兵器の危険性は強調され、選挙の票目当てのロムニー候補は、一も二も無くイスラエルを支持し、自分が大統領に就任したら、イラン攻撃を実行すると語った。

しかし、そうした調子のいい輩ばかりではない。イスラエルのなかにも、戦争反対派が多数いて、彼らはイラン攻撃の危険性を訴えている。元モサドのトップや情報関係のトップたちは、口をそろえて戦争をすべきではない、と強く主張している。

最近になって、イスラエル政府内の良識派の意見であろうか、イランとの間でイスラエルが戦争を起こした場合に、どれだけの犠牲がイスラエル側に出るのかを、明かした人たちがいる。

彼らの考えでは、イスラエルがイランに戦争を仕掛けた場合、最初に相手の電子網を破壊し、次いでミサイル攻撃をするというパターンのようだが、ミサイル攻撃がある程度成功しても、イスラエルもイランやヘズブラ、パレスチナの側からミサイル攻撃を受け、相当の犠牲が出るということのようだ。

イスラエルの市民防衛局の、トップであるマタン・ビルナイ氏は、ミサイルがイスラエルの各都市に飛来し、500人以上の死者が出ると予測を語った。イランとの戦闘の後、戦争は1カ月にわたって継続される、という予測も語っている。

イランの最高権威者であるハメネイ師は、イスラエルがやがては地上から消える、と予測している。

イスラエルがイランに戦争を仕掛けた場合、既にイランからレバノンに、大量に運び込まれているミサイルが、ヘズブラによって発射されることは、確実であろうし、ガザ地区からもハマースがミサイルやロケット弾を、イスラエル国内に撃ち込むことが予想される。そうなれば日和見主義者のファタ、ハつまりパレスチナ自治政府も、イスラエル攻撃に動きだそう。

加えて、エジプトの体制はムスリム同胞団によって握られており、ムスリム同胞団の兄弟関係にあるのが、ガザのムスリム同胞団によって構成された、ハマース組織なのだ。

イスラエルがイランとの間で戦争を始めれば、エジプトのムスリム同胞団による政府が、イランを支持しようがすまいが、ガザのハマースを支援するという立場から、イスラエル攻撃に参加する可能性は否定できまい。

それだけの危険を覚悟しても、ネタニヤフ首相はイランとの戦争を、始めようというのだろうか。多分に宣伝戦として受け止めたい。もし、イスラエルによるイラン攻撃が現実のものとなれば、ハメネイ師が語っているように、イスラエル国家の滅亡も、十分ありうるのだから。