『シリア元首相の狡猾さを嫌う』

2012年8月15日

 先週、シリアの首相だったリヤード・ヘジャーブ氏が亡命した。彼はヨルダンに滞在中に、亡命を決めたということのようだ。その後、ヨルダンからカタールに行く予定であったようだが、未だに実現していない。

彼は記者会見を開き、現在のシリアの内情を暴露しているが、どうも彼の発言は、信用しきれない部分があるようだ。彼に言わせると、シリア政府はシリア領土の、僅か30パーセント未満しか、支配していないとのことだ。

また、シリア政府内部はモラルが崩壊し、金融が破綻し、軍内部にも乱れがある、ということのようだ。亡命するまでその一角を、彼は担っていたのだ。

そうした状況にシリアがあるので、反政府派は統一して一日でも早く、現体制を打倒すべきだと言っているが、彼はいったい何をするというのであろうか。彼が外国に亡命し、内部の政治家や軍人幹部に、反政府に立ち上がれと呼びかけ、それが効果を生むというのであろうか。

彼はまた、エジプトやチュニジアの軍にならって、シリア軍も大衆の側に着くべきだとも語っている。彼の語った、30パーセント未満の領土しかシリア政府が支配していない、というのは嘘であろう。

確かに反政府側は勇敢に戦ってはいるが、反政府側が所有する兵器は、政府軍が所有する兵器とは、比べ物になるまい。最近、シリア政府は強硬策をとり始めているが、伝わってくる情報を読んでいると、反政府側が政府軍の攻勢を受け、後退しているケースが多いようだ。

悲惨な難民の様子、勇敢に戦闘を展開する反政府側の戦闘員たちの様子が、アルジャズイーラやアルアラビーヤテレビを通じて、世界中に流されており、あたかも反政府側が優位な戦闘を、展開しているような印象を受けるのだが、現実はその逆ではないのか。。

宣伝戦が一定の効果を収めることは、これまで世界中の戦争を通じて明らかではあるが、シリアでも宣伝戦が早期に効果を発揮して、一定の成果をあげ、近い将来シリア政府が打倒されるということには、ならないのではないか。

トルコ政府のエルドアン首相は明日にでも、シリアに軍事進攻するような雰囲気を醸し出してはいるがそうはいくまい。ギュル大統領はエルドアン首相の発言を抑える発言をしているのだ。

アメリカによって飛行禁止区域が、シリアに設定される可能性もあるが、それにはロシアと中国が、真っ向から反対しよう。そうなると、膠着状態が当分続くのではないか。リヤード・ヘジャーブ元首相があいまいな情報をもたらして、多くの犠牲をシリア国民の間に出すことは犯罪行為であろう。