トルコのエルドアン首相はシリアのバッシャール・アサド体制に、強硬な対応を叫んでいる。これは多分にアメリカの意向もあってのことだろうが、少し乱暴すぎるのではないかと思っていた。それに加え、何を勘違いしたのか、彼の妻エミネ女史までもが、アサド夫人の批判を始めている。
エルドアン首相はいまにもシリアに、軍事進攻するような口調であり、既にシリアとの国境には、前線基地が設置された、という情報もある。そしてもう一つは、シリア領内に難民の避難のための、解放区を設置しようとも、考えているようだ。
最近のエルドアン首相の対シリアの対応策は、少し乱暴ではないのかと懸念していたが、トルコ政府内部にも同様の懸念が、あるのかもしれない。確かに、シリアからトルコに流入してくる、難民の数が現在では6万人を超え、シリアのクルド人がトルコの仇敵である、PKKと連絡を取り始めているという情報もあり、トルコにとっては極めて、頭の痛い状況であろう。
そうした状況を踏まえ、エルドアン首相が1日も早く、シリア問題を解決したい、と願う気持ちは分からないでもないが、急ぎ過ぎて強硬路線を踏み出した場合、欧米から非難を受ける危険もあろうし、周辺諸国からの反発も、多分に予想されよう。
この事態を踏まえ、トルコのギュル大統領が冷静な発言をし始めている。彼はシリアの状況を憂慮してはいるが、性急な対応策は取るべきではない、という立場のようだ。
例えば、エルドアン首相が語ったシリア領土内への、難民受け入れの解放区を創ることについて、ギュル首相は『国際的な合意なしには行ってはならない。』と語っているし、反シリア政府派への武器供与についても、『その意思はない。』ときっぱりと、その可能性を否定している。
もちろん、こうしたギュル大統領の発言は、だからと言ってトルコが、シリア問題で何もしない、という意味ではない。自国の安全上問題が生じた場合は、敢然とその対応策を進める、とも語っているのだ。
ロシアや中国のシリア対応については、両国による拒否権発動などを挙げ、何の役にも立たないばかりか、問題をますます困難にしている、という批判的な発言をしている。
このギュル大統領の発言は、取りようによっては、シリア内戦が長期化する、という判断に基づいているのかもしれない。長期化した場合、早い段階から介入することは、大きな負担を伴うということは、誰にも分ろう。