トルコの戦闘機がシリア軍によって撃墜された、という情報が流れたのは、6月22日のことだから、既に大分時間が経過している。しかし、いまだに撃墜に関する明瞭な説明が、トルコ政府からはなされてはいない。
最近になって、新たな見解が出てきた。そもそも、シリア側の説明ではトルコ機が、シリア領空を侵犯したので、撃墜したというものだったが、トルコ側はシリア領土から、大分離れた位置に墜落したことから、シリア政府の説明を信じなかったし、受け入れもしなかった。
トルコ機はシリアの陸地から、12キロ以上離れた海に墜落したが、シリア政府が撃墜したと主張する対空砲は、射程が2キロなのだ。つまり、シリア政府の説明は嘘だったということになる。
そこで出てきたのが、トルコ機が撃墜された当時、その海域にロシアの艦船が3隻いたという事実だ。トルコ機が情報収集で飛来したことは、ロシア艦船にすれば邪魔であったろう。従って、トルコ機の撃墜にこれらのロシア艦船が、何らかの関係があったのではないか、という疑問が沸いてきている。
トルコ機は3機で飛行していたようだが、2機は電子妨害があったことで、即座に現地から逃亡したということだ。そして、残った1機が撃ち落とされた、ということのようだ。
トルコ政府はこれまで、シリア領空から5キロ弱離れたところで撃墜され、12キロの地点に落下している、と説明してきている。その地点から戦闘機の残骸が見つかったが、残骸らはミサイルによって撃墜された、何の証拠も出てきていないということだ。
トルコの戦闘機には、対ミサイル防衛システムが搭載されており、ミサイル攻撃を受ければ、自動的にそれが機能するはずでもあった。それでは何故そうならなかったのか、という疑問が沸いてくる。最近になって出てきた情報は、実はトルコ機が撃墜されたのは、シリア軍の対空ミサイルでも対空砲でもなく、ロシアの艦船から発射された、電子兵器によるものだったという説だ。
この情報が事実であるとしても、トルコは軽々にはそのことを主張し、ロシア非難を始めることは出来まい。トルコはシリアやイラン、イラクとの関係が悪化しているなかで、ロシアも敵に回さなければならなくなるからだ。
それではロシアは、何故トルコ機を撃墜したのであろうか。単にトルコ機が情報収集を、していたためであろうか。あるいは、ロシアはトルコとの緊張関係を、作り出したいと考えているのであろうか。もちろん、それはロシアが撃墜したという前提が、正しければ初めて検討される課題だが。