エジプトでモルシー大統領が指示し、カンデール首相が新内閣を結成した。当然のことながら、この新内閣がどのような構成になるのかということは、今後のエジプトに関する、種々の予測をする好材料となろう。
そのなかでも、新しい国防大臣に誰が就任するのか、ということがエジプト国内ばかりではなく、世界中から最も注目を集めていたものと思われる。結果は、ムハンマド・タンターウイ国防大臣がそのまま大臣職に、留まることとなった。
このことがどれだけ、旧官僚や政府の要職にあった人たちを、元気付けたことであろうか。そして、イスラム色を濃くしていくエジプト政府に、不安を抱いていた多くの世俗主義者たちも、本音では官僚たちと同様に、安堵したものと思われる。
カンデール首相は当然のことながら、今回の組閣に当たっては、モルシー大統領と細かい打ち合わせをし、人選をしたと思われる。つまり、モルシー大統領もカンデール首相と同様に、ムハンマド・タンターウイ国防相の留任を、望んだということであろう。
それは何故なのだろうか、多分にアメリカの意向が、働いていたであろうことが伺われる。アメリカはムスリム同胞団をある程度信用し、あるいはモルシー大統領を信頼していても、ムスリム同胞団の多くのメンバーはイスラエルに対して、強い拒否の立場を堅持している。
加えて、ムスリム同胞団のメンバーの多くは、ガザのハマースとその母体であるムスリム同胞団に対し、際限のない支援を送りたいと考えていよう。そのことは、既にガザとエジプトのゲートが開かれたことや、ガザへのエジプトからの支援などで分かろう。
そうなると、今後ムスリム同胞団の若手メンバーや、サラフィストのメンバーがガザに対し、もっと支援をするようにモルシー大統領に迫った際に、ブレーキが効かない状態が、発生する危険性もあろう。
そこで、モルシー大統領は危険を承知の上で、エジプト軍の力に依存したのではないだろうか。今後ムスリム同胞団内部や、他のイスラミストから不満が出た場合は、軍の圧力という切り札が切れる余地を、残したのではないか。
エジプトの軍部やムハンマド・タンターウイ国防相にしてみれば、これである程度の権限を、掌握し続けることが出来ると考えたろうし、何時でも軍はムハンマド・タンターウイ国防相というゴッド・ファーザーの下に、行動を起こすことが出来るとも考えたろう。