今週の火曜日、エジプトのモルシー大統領が、イスラエルのペレス大統領に対して書簡を送ったことが、ニュースとなった。それはイスラミストの大統領が、初めてイスラエル側に送った、公文書だったからだ。
内容は、今後エジプトイスラエル双方が努力して、中東の和平を実現していきたい、といった一般的なものだったが、エジプト側がこれを否定したことから、大きな反響を呼んでいる。
イスラエルのペレス大統領オフィスには、在イスラエル・エジプト大使館経由で書簡が届けられ、それは書留郵便(?)とファックスで届けられている。書留郵便は在イスラエル・エジプト大使館の公式便箋を使用しているし、ファックスは述べるまでもなく、発出日の日付と『EGY EMB TEL AV』という表記が自動的に書き込まれるようになっており、その通りだった。
カイロのモルシー大統領のスポークスマンは、書簡を送った事実はないと否定しているが、イスラエル側は在イスラエル・エジプト大使館から、事実を公表していいか否かの、問い合わせ電話がかけられ、モルシー大統領のスタッフはそれに、許可を出したということだ。
モルシー書簡は確実にペレス大統領に対して、送られたものと思われる。しかし、なぜモルシー大統領側はこれを否定しているのだろうか。それはムスリム同胞団のこれまでの、対イスラエルの立場が極めて、ネガテイブだったことに起因していよう。
モルシー氏は大統領に就任した際に、イスラエルとの合意を含む、いずれの国際的な合意も尊重する、という立場を明らかにしているが、それには条件が付けられていた。つまり、キャンプデービッド合意文の一部は、修正する必要がある、というものだった。
モルシー大統領側が今回の、ペレス大統領あての書簡を否定しているのは、多分にエジプト国民や、他のイスラム原理主義者ばかりではなく、ムスリム同胞団内部に対する配慮からであろう。
常識的に考えれば、最もデリケートな関係にあるイスラエルとの外交関係を、一日も早く再開するべきであり、たとえ個人的な感情がどうであったとしても、ペレス大統領に対して書簡を送るのは、当然の行為であろう。
ペレス大統領はモルシー氏の大統領選での、勝利の後には祝電を送っているし、先のラマダンでも書簡を送っているのだ。モルシー大統領は当然のことを当然のこととして、実行していかなければ、エジプト国内外で、次第に信用を失っていくことになろう。