『WMD(大量破壊兵器)の再現』

2012年7月24日

  2003年3月に始まったイラク戦争は、その戦争原因としてイラク政府が所有するとされた、WMD (大量破壊兵器)にあるとされた。しかし、実際には、アメリカが主張したような核兵器も、核兵器開発につながる施設も、出てこなかった。

そしていま、再度WMD が取りざたされている。今回の場合は、イラクの場合とは異なり、実際に存在しているということだ。WMD を所有していると非難されているシリア政府,は、化学兵器 (WMDの一種)の存在を、正式に認めている。

シリア政府は自国民に対して使用することはないが、外国軍に対してはその限りではない、と今回の緊張のなかで言明しているのだ。シリア政府が自国民に対しては、使用しないと言ったのは、イラクがかつてハラブジャのイラク・クルド人に対して、毒ガス兵器を使用し、大量の死者を出していることからの、発言と思われる。

さて、シリア政府はどのような化学兵器を、所有しているのであろうか。

BBCによれば、シリアは世界4位の化学兵器を所有する国であり、1980代から生産が行われている。主な生産工場は3か所あり、それらはアレッポ、ホムス、ハマだと言われている。

 化学兵器の種類はマスタード・ガス、サリンガス、そしてVX神経ガスだと言われている。

アメリカやイスラエルはこの化学兵器が、レバノンのヘズブラの手に渡った場合、イスラエルの安全は脅かされるとし、それを阻止するためには、いかなる作戦でも実行しようということだ。

同時に、シリア問題を外交的に解決することの、合意が得られた場合には、国連(アメリカとイスラエル)によって、シリアの化学兵器生産工場は徹底的に、調査されるということであろう。

もちろん、現段階ではアメリカ政府が、外交的解決方針を捨て反政府派に、兵器を供与する方向に変わっていることから、平和的な化学兵器の査察はありえまい。そうなれば、シリアの化学兵器が明るみに出るのは、シリアが欧米イスラエルなどによって、政権が打倒されてからではないのか。

その前の段階では、外国人傭兵のみを対象に使用される、という説明がなされても、それが国内で使用される場合、シリア国民も犠牲になる、ということではないのか。シリア政府が言う外国人に対しての使用は、国内では使用しないという説明は、なされていないのだ。

化学兵器、アウシュビッツのガス室、ハラブジャ、シリアの残虐なイメージは、今後シリアに対するいかなる対応をも、許すことに繋がるのではないか。