『ヨルダンがサウジアラビアとシリアの板挟み』

2012年7月31日

 ヨルダンはいま、極めて危険な立場に立たされている。それは湾岸諸国、なかでもサウジアラビアからの、強い要求があるからだ。サウジアラビアはヨルダンをFSA(自由シリア軍)の、拠点にしたいと考えているからだ。

アラブの国ではないトルコが、FSAに対し秘密の軍事基地を提供しており、かつ難民キャンプを設置しているのだから、ヨルダンはもっと積極的にシリアの反政府派を、支援すべきだという論理であろうか。

これまで既に、ヨルダン軍とシリア軍は両国の国境地帯で、何度か銃撃戦を展開しているということだ。ヨルダン政府はそれをひた隠しに隠しているが、軍のなかから情報が漏れてきているし、国境地域にいる一般人からも、銃撃戦の情報は漏れてきているのだ。

サウジアラビア政府はヨルダン政府に対し、FSAを支援しシリア難民を受け入れること見返りに、資金援助をすることを口にしている。ヨルダンの財政が悪化しているなかでは、このサウジアラビア政府の申し出は、きわめて美味な毒盃ではないのか。

ヨルダンがシリアの反政府派を支援することは、シリアとの本格的な武力闘争に発展する、危険が多分にあろう。すでに一部情報筋からは、シリアが国内の問題をヨルダンに転嫁することを計画し、行動を起こしているという情報も、流れてきているのだ。

その証拠は、シリア軍がヨルダンに集結している兵器は、一般的な難民の取り締まりや、FSA掃討のレベルではなく重火器が含まれていることから、ヨルダン軍との本格的な武力衝突を、前提としたものだと見られている。

ヨルダンとシリアでは軍事力において相当の差があり、ヨルダン軍がシリア軍と武力衝突した場合、とても勝ち目はないだろう。それを承知でサウジアラビアがヨルダンに対して、FSAに拠点を提供しろというのは、別に目的があるからではないか。

一般的には、サウジアラビアが一日も早いアサド体制の打倒を、望んでいるからだという説明になろうが、実はシリアに居住するパレスチナ難民の処遇が、絡んでいるのではないかと思える。

その推測が間違っているとしても、ヨルダンにとってサウジアラビアの要求は、極めて厳しいものであろう。サウジアラビアのヨルダンに屋いする要求は、多くの問題を抱えるヨルダンにとって、シリア軍との武力衝突を抜きにしても、体制を不安に追い込んでいく、原因になるのではないか。