『イスラエルはトルコに泣きを入れたのか』

2012年7月26日

 もう2年が経過したが、マビ・マルマラ事件(ガザ支援船銃撃事件))はいまだに、イスラエルとトルコとの関係に尾を引いて、悪影響を及ぼしている。

トルコ側は公海上で、武器を携帯していないトルコのガザ支援船が、イスラエルの特殊部隊に襲撃され、8人のトルコ国民と1人のトルコ系アメリカ人が殺害されたことに対する、正式な謝罪と補償を求めてきている。

しかし、イスラエル側がこれに応じなかったため、トルコ側はイスラエルとの関係を断ち、NATOの合同軍事演習でも、イスラエルを参加させないという、厳しい対応をしてきている。

このことは、トルコにとっても少なからぬ、悪影響を及ぼすことになろう。それはイスラエルを支える、世界のユダヤ資本がトルコに悪感情を持つことになり、経済金融面で種々の工作をしてくる危険性があるからだ。

他方、イスラエルにとっても、この問題を放置しておくことは、西側所諸国との関係上、トルコを通じた中東諸国との関係上でも、マイナスであろう。

最近では欧米諸国の経済的後退が激しく、イスラエルに対する支援やイスラエル製品の輸出に、影響が出てきていよう。そこで、イスラエルは何とかトルコとの関係を修復し、地域での孤立を避けたい、と思い始めているようだ。

イスラエル外務省高官は、イスラエルがトルコに対して、謝罪することはやぶさかではないと語り、かつ、イスラエル・トルコ合意文書の中に、明確に謝罪という文言を入れる用意が、出来ていることを明かしている。

しかし、イスラエルにとってその謝罪がなされ、トルコとの関係が正常なものになるようにする上で、幾つかの問題が残っている。それはガザ封鎖問題をどうするかということに加え、マビ・マルマラ号犠牲者への補償の問題だ。

イスラエルにしてみれば、犠牲者への補償はできるだけ少ない金額にしたいであろうから、イスラエルとトルコ両国政府間で合意し、個別の裁判案件にはしたくない、ということであろうか。

ガザの封鎖問題も、もしトルコが希望しているように、全面的に開放されれば、武器や危険物が搬入品のなかに、隠されている場合もあろう。それはガザからのテロ活動を激化させ、本格化させることに繋がるという懸念が、イスラエルにはあるのだ。

日本人に言わせれば、税関検査でそのようなものは発見できるのだから、人道支援物資の搬入は、全面的に認めるべきだということになろうが、死と背中合わせに暮らしているイスラエル国民には、そんな甘い判断はできないのだ。それがトルコとの関係正常化の上で、イスラエルを躊躇させているのだ。