『シリア・クルドはトルコの新たな頭痛の種』
中東諸国のなかで、例外的にあまり深刻な問題を抱えていない国は、トルコであろう。しかし、そのトルコがいま、新たな頭痛の種を、抱えつつあるようだ。
それは、隣国シリアのクルド人の動向だ。シリアもまた、トルコと同様にクルド人を、国内に擁しているが、今回の国内混乱のなかで、彼らクルド人がシリア北部の幾つかの街を、制圧し始めているのだ。
シリア国内のクルド人たちは、シリア軍から同国北部の支配権を奪取した。そのシリア国内のクルド人の組織のなかで、最も大きいものがPYD( 民主統一党)であり、シリアの北部最大の都市カミシリ市は、クルド人によって支配されている。
最近になってそのPYDが、トルコと敵対関係にあるPKK(クルド労働党)と、連携し始めているのだ。もし、この連携がより本格的なものになれば、トルコの反政府クルド組織であるPKK が、シリア北部に拠点を構築することができ、反トルコ活動がより活発になる、危険性があるのだ。
一説によれば、シリアのクルド人が支配する、シリア北部の街の一部には、既に、PKKの旗が掲げられているということだ。もちろん、シリアの反政府組織である自由シリア軍(FSA)は、クルド人の勝手な分離は認めないとしている。
シリアのクルド人の反政府活動が活発なったのは、イラク北部のクルド自治政府の、支援によるようだ。最近イラク北部クルド自治区の街エルビルで、シリアの10以上ものクルド人組織が集められ、統一会議を行なっている。
そのことに加え、イラクのクルド自治区代表であるバルザーニ氏は、シリアのクルド人たちに軍事訓練を施したと語っている。バルザーニ氏とトルコ政府との関係が強いことから、トルコ政府は軍事教練そのものに対しては、不満を述べていない。
しかし、今後シリアのクルド人とPKKとの関係が、どうなっていくのかはトルコ政府にとって、極めて重要な関心事であろう。
クルド人問題はトルコ、シリア、イラク、イランにまたがる問題であり、各国にとって頭痛のタネとなってきたが、今後、イラクのクルド人とシリアのクルド人、イランのクルド人、そしてトルコのクルド人が大同団結するようなことになれば、クルド人の国家樹立も夢ではなくなって来よう。
中東の国々は、このように一国が激変すると、隣国に直接的に影響が出る形になっているのだ。だからこそ、中東の国々は周辺諸国に対して、否が応でも関与せざるを得ないのだ。