7月8日の日曜日、ムハンマド・モルシー大統領は、先の選挙で選ばれた国会議員は有効であるとして、7月10日に登院するように指示した。しかし、同時に今回の決定は新憲法が定められ、新たな選挙が行われるまでの、臨時措置だとしている。
このムハンマド・モルシー大統領の決定は、エジプト国内の各方面から、猛烈な反発を受けている。つまり、簡単な表現をすれば、ムハンマド・モルシー大統領は憲法違反の決定を下した、ということになる。それは述べるまでもなく、行政府による司法府に対する、越権行為ということになろう。
イスラム原理主義系の一部政党は、ムハンマド・モルシー大統領の決定を支持したが、ほとんどの政党は違法行為だとして、反対している。例えば、同じムスリム同胞団から離れて大統領に立候補した、アブドルモナイム・アブルフットーフ氏は『彼の行為は憲法違反だ。』と反対しているし、ナセリスト党のサッバーハ氏も『正当な権威を否定するものだ。』と語っている。
さて、このムハンマド・モルシー大統領の決定に対して、軍はどのような立場を示しているのであろうか。軍は『ムハンマド・モルシー大統領の決定は、憲法違反だ。』としている。最高裁判所は『6月14日に発出された決定は、議会選挙が憲法違反であったというものだが、この決定は最終的なものであり、ファイルされており変更はない。』と語っている。
もう一人の大統領候補であったアムル・ムーサ氏は、軍とムハンマド・モルシー大統領、あるいはムスリム同胞団との衝突については、ありえないだろうと楽観している。
彼はまた、今回のムハンマド・モルシー大統領の決定は、アメリカの介入によって行われた、という疑念についても、否定している。彼は軍とムハンマド・モルシー大統領との衝突よりも、今後はムハンマド・モルシー大統領と、憲法裁判所との対立の方が、激化していこうと語っている。
ここで思い出しておかなければならないことは、国会議員選挙を先に実施するか、憲法改正を先に実施するかということが、革命成功後の国会議員選挙前の段階で、議論になっていたということだ。
当時、世俗派の人たちは憲法改正が先であり、国会議員選挙はその後だ、と主張していたが、ムスリム同胞団は国会議員選挙を、先に実施することを主張していた。
実際にはムスリム同胞団の考えの通りになったわけだが、今になってみると、そこには意味があったということではないか。臨時的措置であれ、国会が召集されれば、何らかの決定が可能であり、その国会はムスリム同胞団の多数派になっている。つまり、大急ぎでムスリム同胞団に有利な決定を、生み出してしまうことを、ムハンマド・モルシー大統領は考えているのではないか。
ムハンマド・モルシー大統領の決定に対する支持集会を、ムスリム同胞団が呼び掛けたが、それにどれだけの国民を集めることができるのか。あるいはこの集会に対し、世俗派がどのような対応をするのか注目したい。場合によっては、流血騒ぎになる危険性があろう。そして軍がその事態にどう対応するかが、今後の注目点であろう。