トルコは中東の一国家だが、エネルギー資源にあまり恵まれていない。それには幾つかの理由がある。一つは第一次世界大戦で敗北して以来、地下資源の開発がまだ自由には、出来ない状態になっているからだ。
しかし、この問題はオフショアーに限っては、縛られないのかもしれない。もう一つの理由は、他国との係争がありエネルギー資源を、自由に開発できないということだ、例えばエーゲ海には、ガス資源があることはわかっているのだが、キプロスやイスラエルとの境界が確定していないこともあり、話がついていないので開発が、自由に出来ないのだ。
もう一つは隣国にイランやイラクという、エネルギー大国があるのだが、クルド問題があって、自由に調査開発ができない状態にある。これらの諸問題が解決されれば、トルコは一躍エネルギー大生産国、に躍り出るかもしれない、という期待がある。
トルコが2012年に輸入する石油の量は、金額にして56億ドルといわれているし、それ以外にガスも巨額にのぼる輸入を、イランなどから行っている。そのため、トルコの企業が稼ぎ出す輸出収入の相当部分が、エネルギー輸入代金として消えているのだ。
トルコはこのエネルギー問題を、何とか解決したいと思い、黒海の海底エネルギー資源開発に、力を入れ始めている。現在はシェブロン社が参加しているが、希望が大きくなれば、他の企業も参加してくるかもしれない。
もう一つトルコが、エネルギー問題で重点を置いているのは、イラクのクルド地区に存在する、石油資源に対する期待だ。しかし、このクルド地区の石油資源については、現在イラク中央政府とクルド自治政府との間で、話し合いが付いていないため、トルコが他国に先駆けて動いていても、将来的には不安があろう。
しかし、トルコ政府はクルド自治政府の、バルザーニ議長との関係が良好であることから、将来に対する不安を、あまり抱いていないのかも知れない。将来、クルド自治政府とトルコ中央政府との間で話が付けば、当然の結果として、それまでのトルコとクルド自治政府との合意内容は、大筋踏襲されると考えているのではないか。
その理由は、イラク中央政府も石油を輸出しなければ、国家の運営が成り立たないからだ。しかも、トルコはイラクの欧米への石油輸出の、重要なルートになっているのだ。しかし、こうしたビジネスの展開の仕方は、日本企業にはなかなか、真似が出来ないのではないか。
トルコの企業の活動を見ていると『ハイリスク・ハイリターン』を好むようだ。それは多分にトルコ民族の生い立ちに、影響されているのではないか。トルコ人の先祖たちは、中国の西にあった突厥から、現在のトルコにまで移動していった民族だ。従って臆病では何事も出来なかったのだ。
そのトルコ人と日本人が協力し合えば、これまで日本企業に中東や中央アジア、アフリカで出来なかったことが、可能になるだろう。そう考えて、以前からトルコの重要性について、大分前から自論を展開してきたし、今年の2月には『これから50年世界はトルコを中心に回る』というタイトルの本も出版した。
今年の7月始めに、トルコで日本トルコイラク開発会議が開催され、日本企業とトルコ企業の協力による、イラクの再建が進められる見通しが、立ったようだ。このニュースは私にとって、何よりも嬉いことだ。