『リビア60年ぶりの自由な国会議員選挙』

2012年7月 7日

 

 カダフィ体制が打倒され、リビアでは初の自由な国会議員選挙が、7月7日に実施された。この選挙が今後、リビアをどう変えていくのか、興味のあるところだ。

 初めての、しかも自由な選挙が実施されると聞くと、つい嬉しくなるのは誰もが同じであろう。しかし、中身は必ずしも喜べるものではなさそうだ。選挙実施の数日前から、リビアの東部の中心都市ベンガジでは、選挙関連事務所が襲撃される、という事件が起こっている。

 選挙事務所に対する襲撃では、投票集計用などに使われる、コンピューターが破壊されたり、投票用紙が燃やされたり、投票箱が破壊されたりしているのだ。それはベンガジを中心に、リビアを連邦制にしようと、考えている人たちにるもののようだ。

 連邦制にしようと考える人たちは、リビアの石油がほとんどリビア東部にあることから、連邦制にした方が自分たちにとって、得だと考えてのことであろう。もし、それが現実のものとなった場合、リビア国内ではベンガジを中心とする東部と、トリポリを中心とする西部との間で、戦闘が勃発するのではないかと懸念される。

 問題は東部住民のなかに、この連邦制を支持する人たちが、少なくないということだ。今回の選挙妨害はそうした状況では、容易に起こるということであろうし、それは今後も継続するということであろう。

 他方、トリポリを中心とする西部では、選挙が初めての自由なものであることもあり、投票所に向かう男女が、列を成している光景が報じられている。アブドルラヒーム・キイブ首相や臨時統治機構のムスタファ・アブドッジャリール代表は、なんとしてもこの選挙を成功裏に、行われたとしたいのであろう。

 そして、アメリカやイギリス、フランスを始めとする、西側諸国の認知を新政府が受けて、今後のリビア再建に一日でも早く、取り掛かりたいということであろう。

 今回の選挙実施に当たり、もう一つもめた理由がある。それはリビア東部に比べ、西部の方が議員の数が多く、配分されているということだ。そのことは、今後の政府の決定が、西部に有利なものとなる、可能性があるということだ。

 もう一つの問題は、ムスリム同胞団やイスラム原理主義者(ベルハッジ氏を中心とするアフガン帰りなど)のグループが、活発に動き出しているということだ。彼らはそれぞれに、自派に有利な状況を作り出したい、と考えていよう。そのことに加え、リビア国内では各地の部族グループが、重武装をして何時でも戦闘体制に、入れるようになっているということだ。選挙実施の数日前まで、南東部の町クフラでは部族の反発を、リビア軍が力ずくで押さえ込む作戦、が実施されている。

 今回リビアが実施した選挙は、安定した状況をリビアにもたらすというよりは、国内的対立をますます、激しいものにしていくきっかけになるのではないかと懸念される。