ヨルダンという国家は、もともとヨルダンの地元民(ベドウイン)と、ヨルダン川を挟んだ東岸(ヨルダン領土)のパレスチナ人、それに加えて、4度に渡るイスラエル・アラブ戦争で、難民として逃れてきた、パレスチナ人によって構成されている。
パレスチナ人の人口比率が、どんどん高くなっていることから起こる、国内的な政治不安は、最近特に深刻になってきている。パレスチナ人の多くがムスリム同胞団員であり、このムス陸同胞団はヨルダン国内にあって、最大の政治組織になっているのだ。
そのムスリム同胞団を中心に、ヨルダン国内では民主化要求、経済問題解決要求などを主たる抗議理由として、反政府運動が活発化している。そして、その抗議行動はついに、ヨルダンの王制打倒を叫ぶに至っているのだ。
こうした不安定な国内政治状況に加え、いまヨルダンはシリアから逃れて来る、難民対応でますます困難の度を高めている。シリアからの難民は、シリア人に加え、シリアに居住していた多数の、パレスチナ人も含まれているのだ。
最近では、毎日500人から1000人の難民が、ヨルダンに入り込んでいるが、ついにヨルダン政府は、シリアからの難民受け入れを、拒絶する動きに出始めている。
現段階でシリアからの難民の数は、5万人程度と報告されているが、このまま増加していけば、年末までには7万人に上るだろうと、予測されている。その場合に問題になってくる幾つかのことがある。
第一には、難民保護の費用負担が増大し、ヨルダン政府にとっては、極めて厳しい経済的問題になることだ。第2には、ヨルダン国内のヨルダン地元民と、パレスチナ人の人口比が逆転し、パレスチナ人の方が多数派になってしまうことだ。これまでも、ヨルダン政府が発表する人口比は正しくなく、既にパレスチナ人の人口の方が、多数になっていると言われていただけに、深刻さの度合いを増していくものと思われる。
このパレスチナ人とヨルダン地元民の人口比は、即座にヨルダンの国内政治問題になっていく、危険なものなのだ。それもあって、ヨルダン政府はシリアからの、パレスチナ人難民流入を制限する動きに出ているのだが、そのことはヨルダン在住のパレスチナ人の、反発を招くことは必至であろう。
述べるまでもなく、ヨルダン国内には既に、ヨルダン国籍を取得したパレスチナ人が多数居住しており、難民の多くはヨルダン国籍を持つ、パレスチナ人と家族、親戚関係にあろう。それだけに問題は極めて深刻なのだ。