中東のスーパー・スターになったトルコのエルドアン首相に、陰りが見え始めて来たのであろうか。シリア対応をめぐって、トルコの女性ジャーナリストから批判を受けている。
簡単に言うと、彼女に言わせれば、エルドアン首相のシリア問題への対応は、国益に反するということのようだ。シリアからトルコに逃れてきたシリア難民に対して、難民の避難所を設営したことには異存はないが、その避難所が現在では、反シリア政府(自由シリア軍=FSA)の拠点になっている。
そのことは、シリア政府がトルコを非難し攻撃を加えるに、十分な口実になりうるからだ。そ入ればかりか、この避難所を経由して反政府側に、武器や資金が提供されている。それはシリア政府にとって、放置できない問題であろう。
トルコ政府は最近、シリアとの国境地帯の緊張を、敢えて煽るかのように、軍を移動させ、対空防御も固め、戦闘機も国境ぎりぎりの空域で飛ばしている。これはシリア側からすれば、明らかな挑発行為であろう。
トルコのエルドアン首相は何故こうまでも、シリアに対して挑発的な、行動を採っているのであろうか。想像の域を出ないのだが、考えられることは彼の健康問題だ。彼は重病を患い、2度手術を受けている。そのことから考え方が、性急になっているのかもしれない。
あるいは、外国からの要請を受けて、そのような強硬策を採っているのかもしれない。そのような依頼を、トルコ側にするであろう国は、幾つも考えられる。欧米諸国のシリア現体制に対する見方は、極めて冷徹だからだ。
ただ問題はそのような外国の、依頼がたとえあったとしても、トルコはそれに乗るべきではないのではないか。トルコ軍にとって、シリア軍は強敵ではないとしても、いったん戦端が切られれば、しかるべきダメージを受けることは、トルコにとって必定であろう。
もし、今回の強硬策がエルドアン首相の健康が、影響したものであるとするならば、彼は国家をリードする立場になくなった、ということではないか。一国をリードする者は、自分の感情に流されてはなるまい。あくまでも国益を、最優先するべきであろう。
世の中には『窮鼠猫を咬む』という言葉がある。たとえ自軍が劣勢にあるとはいえ、トルコ側があまりシリアを追い込めば、シリア側が暴発する危険が、あるということだ。
トルコがシリアとの間で戦争に至れば、結果的に反政府側のシリア人も敵に回すことになろう。戦争の犠牲者は権力側の人間だけではなくなるからだ。