エジプトのモルシー大統領が、最高裁の決定を覆す行動に出た。それは、先に行われた国会議員選挙で、不正な形で立候補して当選した議員に対し、最高裁が当選の無効判定をしたものを覆し、国会の召集を行ったことだ。
国会議員選挙では、多くのムスリム同胞団のメンバーが、そのことを隠して当選し、結果的にムスリム同胞団の政党である、自由公正党に所属する形になった。その数が国会議員の半数を超えたことから、問題視されていたため、最高裁の決定は、問題なく社会から、受け入れられていた。
このモルシー大統領の決断は、何のために行われたのであろうか、という疑問がわく。なぜならば、不正な形で当選し、資格が認められなくなった議員を招集して、何が決められるというのであろうか。単なるセレモニーを、ムスリム同胞団多数の議会で、行いたいだけではないのか。
モルシー大統領の説明によれば、この議員たちは新憲法が制定され、新たな選挙が実施されるまでの、臨時措置だと説明しているが、そのことに何の意味があるのだろうか。当然のことながら、次回選挙では多くのムスリム同胞団の候補者が、議席を得ることが出来ないであろう。
このモルシー大統領の決定に対し、軍最高評議会は緊急会議を開催し、対応策を検討しているようだ。しかし、今後、軍最高評議会がどのような行動に出るのかは、今迄のところ明らかにされていない。
今回の大統領選挙で、候補者の一人であった元外相で、アラブ連盟事務総長を務めたアムル・ムーサ氏も、異論を唱えている。彼に言わせれば、法の決定を政府が覆すことは、三権分立という基本的な民主主義のルールを、破るものだということになる。
行政側が司法側の権限を認めないということは、今後、行政府によってどのような違法なことでも、覆されてしまう危険性がある、ということであろう。
モルシ―大統領が、彼が言うとおりに、今回の決定を臨時的な措置であるとしても、認められるべきものではあるまい。そうであるとするならば、このまま不法な当選議員が、国会に留まり続けるということも、起こりうると懸念されるのではないか。
このモルシー大統領の決定に対し、軍最高評議会がクーデターを起こすとは、考えられないが、何らかの強い対応策を考えて、実行するのではないかと思われる。ムスリム同胞団と軍最高評議会は、まさに知恵比べの段階に、入ったということであろう。