トルコが抱える大問題は、現在の段階ではシリアとの軍事緊張であろう。しかし、これまで長い間継続して、トルコ政府が対応に苦慮してきた問題は、トルコ国内のクルド人問題だ。
トルコ国内に抱える2000万人を越えるクルド人に、どのような立場を提供するかということだった。トルコ政府はかつてトルコ在住のクルド人に、同じトルコ人として対応するために、クルド語の禁止、クルド文化の禁止、という厳しい措置をとってきていた。
しかし、開発公正党(AKP)が政権をとってからは、段階的にクルド人に対する自由を拡大してきている。トルコ国営テレビ放送のクルド語による、24時間放送は、その典型例であろうし、クルド語による教育の自由化も、その一つであろう。クルド語文学作品や歌謡の許可も、AKPが進めた同様の改善策だ。
その甲斐あってか、最近ANAR社が行った、トルコ・クルド人に対する世論調査で、喜ぶべき結果が出ている。以下はその一部だ。
:トルコ人と平和的に共存したいクルド人―66パーセント
:トルコ人と別々に居住したいクルド人―6・2パーセント
:トルコ人を兄弟とみなすクルド人―84パーセント
:トルコ人を嫌っているクルド人―4・1パーセント
:AKPを支持するクルド人―53・7パーセント(昨年同時期より4パーセント増加)
:CHPを支持するクルド人―25・94パーセント(昨年同時期よる2パーセント減少)
:MHP支持のクルド人―12・1パーセント(昨年同時期より0・88パーセント減少)
:BDP支持のクルド人―7・1パーセント
この世論調査結果はトルコ国内26県で、5179人を対象に行ったものだ。クルド人対象の世論調査にもかかわらず、クルド系の政党BDPに対する支持が、極めて低いのは意外な結果といえよう。
トルコのクルド人が、AKPに対する支持を増加させていることは、その政策がクルド人にとって、極めて歓迎すべき内容だからに他あるまい。加えて、AKPが進める経済改革の成果が、目に見えてきていることにもよろう。そしてAKPはクルド人が多く居住する、トルコの南東部の経済開発に、力を入れていることにもよろう。