『エジプト大統領選挙の余波』

2012年6月27日

 エジプトでは改革派の、ムスリム同胞団候補であるムハンマド・モルシー氏が、大統領に当選した。その結果は、ある意味では当然であり、またある意味では意外であった。

当然と考えられるのは、もしムハンマド・モルシー氏ではなく、アハマド・シャフィーク氏が当選していたら、エジプト国内は内乱状態になっていたのではないか、と思われるからだ。ムスリム同胞団は選挙結果の発表前に、もしムハンマド・モルシー氏が当選しなければ、しかるべき行動を起こす、と警告していた。

意外だったと考えられるのは、軍がアハマド・シャフィーク氏の当選を、無理強いしなかったことだ。軍最高評議会が絶対的な、権限を有しているなかでは、あらゆることが可能であったはずだ。選挙結果の発表が遅れたのは、それをどうするか軍が考えているからだ、とささやかれれていた。

問題は、多くの疑問をはらむ選挙結果が発表されてみると、両候補の得票差は、90万票未満であったという点だ。8900万人のエジプト国民のうちの、半分が選挙権を有していたとして約4500万人、その人口に対する90万票は、そう大きな数ではない。

言い方を変えれば、僅少差で大統領が決まり、エジプト有権者の約半分が、反対する人物が大統領に当選したという事実だ。そのことは、今後に多くの問題を、残すということであろう。

どうやら、ムハンマド・モルシー大統領と軍最高評議会の間では、ある種の妥協が生まれつつあるようだが、そうでもなければ、大統領暗殺事件すら、起きても不思議はあるまい。

ムハンマド・モルシー大統領は、6人の副大統領職を設けたようだが、そのなかには、コプト教徒の女性も含まれているようだ。彼が当選後間もなく口にした『エジプト全部の大統領』を具体的に、実施していくつもりなのであろう。

これで当分の間は、エジプト国内は安定するのではないか。しかし、軍をあくまでも現在の地位から、引きずり降ろすと叫んでいるグループもあり、予断は許されまい。

そしてもう一つの問題は、イスラエルとの関係がどうなるかであろう。ムハンマド・モルシー大統領は『キャンプ・デーヴィッド合意は不平等だ。」と主張し始めている。これをどう変更しようというのであろうか。イスラエル側は当然真っ向から反対するであろう。