エジプトでムスリム同胞団という、イスラミスト組織のメンバーが、大統領に当選した。このことは少なからぬ動揺を欧米諸国や、イスラエルに呼び起こしているようだ。
アメリカ政府はムハンマド・モルシー大統領が、どのような政治を進めていくのか、当分の間静観する姿勢のようだ。これまでにアメリカはムスリム同胞団に対し、接近策をとり、ムバーラク氏が大統領職にある時から、ムスリム同胞団との関係を構築してきている。
今回も大統領決選投票の結果発表の前から、アメリカがエジプト軍に働きかけ、ムハンマド・モルシー氏の当選発表をさせるよう、働きかけて来たことが伝えられていた。そのことは事実であろう。
しかし、それだからと言って、アメリカがイスラム原理主義の大統領を、根本から信用しているとは限らない。これまでのアメリカとムスリム同胞団との関係から、アメリカにとって都合のいい方向にだけ、向かうとは言えまい。
イスラエルも同様に、あるいはアメリカ以上に、ムスリム同胞団出身の大統領が、どのような政策を展開していくのかを、注視しているようだ。イスラエルはムハンマド・モルシー氏の、対応を見ようとしてであろうか、幾つかの試みを始めたようだ。
第一には、シナイ半島からのテロ攻撃が、増加する懸念があるとして、エジプトとの国境地帯に、レーダー網を設置し、監視を強化することを決定している。そしてそれに時を合わせ、ガザ地区への攻撃を強化している。
イスラエルのバラク国防相は、シナイからのテロ攻撃が増加すると警告し、しかるべき対応策を、準備し始めているようだ。
ムハンマド・モルシー大統領がガザのハマース支持表明と、それに伴う具体的な行動を起こせば、イスラエルは直ちに、彼をより厳しい監視の対象に置くだろう。
エジプトのイランに対する対応がどう変化するかも、イスラエルにとっては注目するポイントのようだ。既にムハンマド・モルシー大統領は、イランとの関係改善を、希望していることを語ったが、他方ではムハンマド・モルシー氏が当選発表前に、イランのプレステレビとのインタビューに答えた、というニュースを否定している。
イスラエルのマスコミは、ほとんどが今後のエジプトとの関係に、悲観的な見方をしているようだ。つまり、ムハンマド・モルシー大統領に向けられる視線は、厳しいということであろう。