6月24日の日本時間午後11時ごろから、エジプト大統領選挙の最終結果発表があり、パソコンの画面にかぶりついていた。そして11時40分ごろに、最終結果が発表され、ムスリム同胞団のムハンマド・モルシー氏の当選が、明らかとなった。
そして6月25日、笹川平和財団の主催で、在日イラク大使の講演会が開催された。この会には、バハレーン大使やエジプト、その他の大使館からも参加があった。
イラク大使はアラブの春とその後について、極めて論理的に話をしてくれたが、そのなかで彼が何度も強調したのは、アラブ人の文化に対する理解が、必要だということだった。
アラブで現在起こっていることが、何故どうして今の時期に出てきたのか、それが今後、どのような経緯をたどっていくのか、という内容だった。そのことを考える上で、アラブ人の文化的特徴を知り、彼らの感情の流れを知る必要がある。
それはアラブの政治を動かしていく、アラブの人たちにとって、極めて重要な注目点であろうし、日本の人たちがアラブ人との間で、ビジネスを展開していく上でも、必要だと語っていた。
まったくその通りであろう。本来は日本人にも文化に対する配慮が、多分にあったはずなのだが、最近ではビジネス一辺倒に、なってきているのではないか。そのために、日本人なら敏感に分かりうること、簡単に理解できるアラブ人の心理の変化が、全く読めなくなっているのではないだろうか。
講演の後、NHKの出川氏のコメントと、会場との質疑議応答があったが、そのなかで興味深かったのは、バハレーン大使が『今後アラブ世界はどうなっていくか?』と質問したことだった。
バハレーンはご存知の通り、現在の体制が打倒されることも十分に予想される、革命途上にある。その国の大使が自国を含めた、アラブ諸国の将来について心配しても、無理からぬことであろう。
彼の質問に対するイラク大使の返答は『文化に対する理解と探求』だったと思う。講演会が終わった段階で、私はバハレーンの大使に『今後混沌は10年は続くと思います。』と話した。バハレーン大使は少し暗い表情をしていた。
いまアラブ世界は全てが大変革しようとしている。それが2~3年で達成するとはとても思えない。アラブばかりか日本を含む、世界が大変革の途上にあるのだから、一国だけが安定するということはありえまい。大統領に当選したムハンマド・モルシー氏も、彼自身の計画はあるものの、先のことは全く予測できていないのではないのか。