『ムバーラク前大統領の死去』

2012年6月20日

 どうやら、エジプトのムバーラク前大統領が、死亡したようだ。軍の病院のベッドの上で死ねたのは、彼にとって幸運なことであったろう。アラブの春革命のなかで、彼を絞首刑にすべきだ、という声があったことを考えると、ベッドの上で死ねたのは、まさに幸運ということに、なるのではないか。

ムバーラク前大統領に対する、6月2日の最終判決は、終身刑というものだった。厳しいと言えば厳しいものであり、穏便な判決と考えればそうでもある。ムバーラク前大統領のデモ隊に対する、銃撃命令をめぐって意見が分かれたのだが、裁判官は死刑判決をすることはできないし、だからと言って無罪や軽い判決も下せなかったのではないか。その結果が、終身刑という判決を出させたということであったろう。

ムバーラク前大統領が軍人であったことから、エジプト軍は彼を軍の正式な葬儀として、あの世に送り出すようだ。当然の判断であろう。しかし、反ムバーラク側の人たちは、この軍の判断を非難することは明らかだ.ただ、国葬にならないだけでも、納得すべきではないのか。

さてこの軍によるムバーラク前大統領の葬儀に、アラブ各国は代表を送るのだろうか。送るとすれば、どのレベルの代表になるのか、関心の持たれるところだ。もちろん、アラブ諸国ばかりではなく、欧米諸国はどう対応するのかも、関心がもたれる。

ムバーラク前大統領の晩年は、汚れたイメージでいっぱいだったが、彼がエジプトにもたらした功績は、極めて大きなものであったことも、否定すべきではあるまい。公平な評価を世界が示すのか、エジプト国民はあくまでも憎しみだけで、自国の大統領の業績を判断するのか。エジプト国民の民度が、問われるということだ。