『ナーイフ皇太子死去後のサウジアラビア』

2012年6月17日

 

 ナーイフ皇太子が死亡したことは、昨日遅くお伝えしたが、その結果どのようなことが今後、サウジアラビアに起こってくるのかということを、予測してみた。しかし、現段階ではあまり大胆な予測は、するべきではないと思われるので、推測が誰にも納得できる範囲に留めることにする。

 ナーイフ皇太子が死亡したことは、サウジアラビア王室内で次の皇太子を選出することが、第一優先課題であることは、述べるまでもあるまい。アブドッラー国王の健康にも問題があり、何時何が起こるかわからないのだ。そうなると何時でも国王に取って代われる、皇太子の選出がサウジアラビアにとって、喫緊の問題であるということになろう。

 この皇太子の選出には幾つかの問題がある。第一にはこれまでの王位継承権の順位を守っていくのかとういうことだ。それで皇太子を選出すればナーイフ皇太子同様に高齢者が選ばれることになる。多分、サルマン王子がその、最有力候補であろう。

 以前からサウジアラビア王室内には、現在の王位継承権上位にある、第二世代ではなく、若手の第三世代から皇太子や国王を、選出すべきだという意見があった。

 しかし、そうなると種々の複雑な問題が出てくるために、高齢者を続けて皇太子や国王に、即位させる方が選択されてきていた。しかし、それも今回のナーイフ皇太子死亡で、真面目に再検討されるのではないかと思われる。なぜならば、ナーイフ皇太子が就任したのは、つい昨年のことでしか無いからだ。

 新たな皇太子を選出するに当たって、当然のこととして、サウジアラビア王室内で、第二世代から選出すべきだという意見と、第三世代から選出すべきだという、意見の衝突が起こるものと思われれる。

 続いて予測されることは、民主化をどう進めていくかという問題だ。これには皇太子選出と絡んで、誰がより民主的な政治を行うのか、ということが話題になろう。しかし、民主化は同時に王室の権限を、弱めることにも繋がるため、頑強な抵抗が王室内部から出てこよう。

 しかし、同時に民主化の波が、アラブの春革命の拡大により、サウジアラビアにも押し寄せてきているわけであり、これを阻止しようとすれば、それもサウジアラビア王家を弱めることになる、危険性があろう。

 つい最近、アブドッラー国王が女性の車の運転許可について、柔軟な姿勢を示したのは、そうした社会の流れを意識したからであろう。

 もう一つの懸念は、ナーイフ皇太子が国内の締め付けに、強硬手段をとり不人気であったが、次の内相あるいは皇太子に就任する人物が、より民主的な立場を採った場合、どのようなことが予想されるかということだ。

いまイランとサウジアラビアとの関係は、極めてよく無い状態にあるが、サウジアラビアはイラン人多数を逮捕し、処刑する動きに出ている。その嫌疑はいろいろあろうし、丁稚上げだともいえよう。イランはこの問題について、応分の対応を採るといきまいている。

 サウジアラビアが間違った選択をすれば、この処刑問題を含め、イランとの関係が悪化し、両国にまたがる問題、バハレーン問題やアルカテイーフ問題が緊張してくる危険性があろう。

 いずれにしろ、ナーイフ皇太子の死亡は、今後のサウジアラビア情勢に、多くの不安の雲をもたらした、ということであろう。