イラクのマリキー首相の独裁色が強まるにつれて、イラク国内の各派はマリキー非難を強めている。そのなかでも際立って問題になってきているのは、これまでマリキー首相を支持支援してきていた、サドル師のマリキー離れであろう。
サドル師は最近になって『私はマリキー首相を全く信用していない。』とまで言い切っているし、クルドやスンニー派、シーア派各派などとの協議によりマリキー首相はずしに動き出している。
そうした背後関係があるなかで6月13日にイラクの9都市で連続的な車爆弾テロ事件が起こっている。その犠牲者の数はまだ不明確だが84人が死亡し死傷者の数は300人を超えると言われている。
今回の爆弾テロの犠牲者が多かった理由の一つは、イマーム・カーズミーの宗教催事があるために、イラク全土やイランからの参加者が、詰めかけていたからであろう。
イラクで突然激しさを増している爆弾テロについて、トルコの専門家は『悪魔の組織が、セクト同士の戦争を煽っている。』と表現している。トルコ政府がそのようなイラクの国内状況に、反対しているのは述べるまでもない。隣国の混沌は往々にして、自国内にも影響を及ぼすからだ。
トルコのマスコミは今回の一連の爆弾テロは、シーア派の巡礼者を狙ったものであり、5都市で起こった16のテロ事件がそうだ。他のテロはクルドの事務所を狙ったものなどだった。
こうした状況を考えると、スンニー派シーア派、クルドの対立を煽るために、テロ事件が仕掛けられたものではないか、と想像しても不思議はあるまい。
マリキー首相はテロ多発を理由に、治安に対する責任を問われようが、同時に、そのことは取り締まりを強化する口実を、マリキー首相に与えることにもなろう。したがって、現段階では誰がテロ事件の裏で動いているのかを、断定することはできない。
今後、このテロ活動は活発化していく、可能性の方が大きいのではないか。当分の間、スンニー派シーア派クルドの間で、疑心暗鬼から敵意が増幅され、テロ合戦が起こると考えるからだ。しかし、この場合も一体その結果、誰が得するのかを、考えてみる必要があろう。