『エジプトは警察国家になるのか』

2012年6月11日

 エジプトのマスコミが、外国人に対する警戒を呼び掛けたようだ。その状況を説明するために、わざわざ外人と話すエジプト人の若者の様子を製作し、それをテレビで放映したようだ。

アラブの春革命以来、エジプト国民の多くが自由を満喫しているが、その結果、エジプトの政治や経済に関する情報が、外国政府機関や外国人に大量に漏れているということに対する、警戒からのようだ。

なかでも警戒されるのは、外国人ジャーナリストのようだが、そうなると街頭でのインタビューは、極めて危険なものとなっていくのではないか。街の喫茶店に行き、ジャーナリストがエジプト国民に話しかけた場合、スパイ容疑で逮捕される危険性が、高くなってきたということではないのか。

テレビ局の人たちがグループで出向いて取材する場合は、情報省の許可を取る必要があることから、少し違うだろうが、個人のジャーナリストが活動する場合は、ほとんど情報省の許可など取っていないので、危険極まりない状況が出てきている、ということではないか。

一体、これは何処から出てきたのであろうか。エジプトで情報を担当するのは、述べるまでもなく情報省であり、もう一つは軍の情報部だ。彼らが外人ジャーナリストは、スパイの可能性がある危険な存在であるとしたことは、エジプト国民に対し外国人との接触をするな、ということであろう。

その意図するところは『外国人一般に対する警戒心を高め、その結果として、外国人と接触するエジプト国民を減らすこと』もあるが、それ以上にスパイに対する情報提供者として、エジプト国民を逮捕取り締まることに、目的があるのではないかと思われる。

エジプトを含め外国人は、スパイという言葉に、敏感に反応するし警戒もする。この一言で軍や情報部は、権限を拡大できるようになるのではないか。大統領の決選投票が近づいたいま、各候補の資金源がどこであるのかを、追及する動きが活発になってきている。特にムスリム同胞団に対しては、その傾向が大だ。

外国人に対する警戒、スパイの危険な活動といううたい文句は、実はエジプト国民を縛る方便ではないのか。