ヨルダンでWANA会議が開催され参加した。その会議で感じたことはすでに書いたが、それ以外にヨルダン滞在を通じて感じたことがある。それはこの国が抱えている経済的問題だ。
これまでも、何度となくヨルダンの体制が、不安定なものだということを報告してきたが、今回のヨルダン訪問で、その判断が間違っていない、という実感を持った。
これはヨルダンだけが抱える問題では無いのだが、エネルギー資源を持たない国々は、いま大変な苦難に直面している。産業にはエネルギーが必要なことは誰にも分かろう。しかし、その産業の血ともいえるエネルギー価格が上昇すると、コストはおのずから上昇し、輸出価格に影響が及んでくることにある。
結果手には輸出が低迷し経済は悪化するということになる。しかし、政府はエネルギー輸入価格が上がると、国内のエネルギー価格も上げざるを得なくなる。工場の電気代が上がり製品コストが上がり、家庭でも電気代が上がり、生活に影響が出るということだ。
ヨルダン政府も忍耐の限界に到達し、電気代金の大幅な値上げを決定した。しかし、値上げは部門別に異なる方式を採り入れた。工場への供給価格、家庭への供給価格といった具合にだ。
ヨルダンではこれ以外に、水料金を値上げすることになった。これも工場、ホテル、家庭と異なった価格体系になっている。
これらの値上げ幅は意外に大きい、日本の消費税5パーセント引き上げのレベルでは無いのだ。15パーセントから20パーセントにも及ぶのだ。
こうした政府の新方針に対し、国民は生活が圧迫されることから、値上げ反対デモを始めている。しかし冷静に考えれば、デモをしても何の意味もあるまい。輸入価格が上がっているのであり、政府の失政の結果では無いのだからしかたが無いのだ。
それでも国民は抗議しなくては気がすまないから、抗議デモが起こるのだ。この動きのなかで、ヨルダンでもムスリム同胞団の動きが目立ってきている。彼らが政治の流れの主流になってきている。
ムスリム同胞団を中心とするデモや抗議集会を構成しているのは、ほとんどがヨルダン国籍を取得したパレスチナ人や、いまだヨルダン国籍を取得していないパレスチナ人たちだ。
ヨルダンではパレスチナ人が完全に政治の流れを作り、その主役に納まっている。その結果が何を生み出すのかを、今のうちから考えておく必要があろう。