『アラブは一つがアラブ会議から消えた』

2012年6月 8日

 

 アラブの会議では決まって語られるフレーズがある、それは『アラブは一つ』『アラブの連帯』であり『パレスチナ問題の解決と独立国家の樹立』『エルサレムの解放』だ。

 しかし、最近の会議ではこれらのフレーズが、姿を現さなくなってきている。いままでの会議では、発言者は決まってこれを繰り返していたのだが、最近では誰もほとんど口にしなくなっているのだ。

 その理由を考えてみたのだか、結論は「アラブの春革命」にあるのではないかと思われる。アラブの春革命が起こった国々では、その後混乱が続いており、他のアラブの国のことなど気にしていられないのであろうか。アラブの春革命に見舞われていない国の幹部たちも、やがては自国にもアラブの春革命が起ころう、という懸念を抱いている。

 ヨルダンで開催されたWANA 会議も例外ではなかった。発言者たちはアラブの連帯も統一も、エルサレム問題の解決も口にしないのだ。それよりも自国の問題ということだったのであろう。

 つまり、美辞麗句はもう流行らなくなり、現実を直視した発言が目立ってきているということであろう。

 アラブ諸国が会議の席でアラブは一つだとか、アラブの連帯という発言をしなくなったのは、前進ではないかと思われる。これまではそう言う事により、アラブの人口、アラブの面積、アラブの資源と資金、アラブ軍の総体などを語ることによって、幻想を膨らましていたのだから。

 パレスチナ問題エルサレム問題もそうであろう。これまでアラブ各国元首は、実現不可能であり心にも無い、パレスチナ問題の解決を語ることによって、自国内の経済問題を誤魔化してきていたのだ。

 私にはアラブの春革命を賞賛する気は全く無いが、アラブの現実にアラブ大衆を目覚めさせたことと、権力者たちが使っていた「アラブの統一」「アラブの連帯」「エルサレムの解放」「パレスチナの解放」といった古いカードを、無効にしたことでは賞賛したい。