エジプトでは大統領決選投票の結果、ムスリム同胞団のムハンマド・モルシー氏が当選したようだ。対抗馬のアハマド・シャフィーク氏側は、あまりにも早いムハンマド・モルシー氏の勝利宣言に、クレームを付けたようだが、それで何も変わるわけではあるまい。
そこで今度は、軍最高評議会がこの大統領選挙結果を受けて、どう対応するかということに、注目すべきであろう。大統領の決選投票が開票される前に、軍最高評議会は最高裁判所を通じて、先に行われた国会議員選挙で、無効な当選者がいたことを発表した。
その内容によれば、国会議員選挙は旧法に基づいて行われており、旧法に従えば3分の1の当選者が無効、ということになるというのだ。述べるまでもなく、その無効とされる当選者の相当数は、ムスリム同胞団のメンバーであろう。
旧法では宗教政党からは立候補できなかったはずだし、出獄後間もない人も、立候補できなかったはずだ。それ以外にも、立候補を禁じる条項は、幾つもあったろう。
そもそも、国会議員選挙の前に、世俗派は憲法を改正した後に、選挙をするべきだと主張し、ムスリム同胞団は選挙後に、改正すべきだと主張していた。ムスリム同胞団が選挙後の憲法改正を主張したのは、選挙で勝てばムスリム同胞団人が多数当選し、憲法改正を有利に行える、と判断したからであろう。
ここにきて、そのつけを払わせられる羽目になりそうなのだ。軍最高評議会は何としても、ムスリム同胞団がエジプトの権力を掌握することを、阻みたいと考えていよう。その動きの一つが、今回の国会議員当選無効であったろう。
軍にとって、もう一つ重要なのは、軍の自由がどこまで、ムスリム同胞団の多数を占める議会や、大統領によって認められるかだ。この一点について軍がムスリム同胞団に、妥協することは考えられない。
ムスリム同胞団の権力掌握は、イスラエルとの関係も危うくする、危険性があると軍は考えていよう。実際に、ガザのハマースがエジプトのムスリム同胞団の指示に従って、イスラエルに攻撃を加えたという情報が、つい先日伝えられている。
軍としては近隣諸国との間に、軍事的緊張は生みたくないと考えていよう。つまり、ムスリム同胞団によって周辺諸国、なかでもイスラエルとの緊張関係を造られることは、放置できまい。
軍最高評議会は、今月末には権力を移譲することを、明らかにしているが、それまでには憲法が改正され、国会議員選挙のやり直しの、予定が立たなければなるまい。エジプトの国内政治はもう少し時間がたたなければ、結論は見えないということであろう。