エジプトの第一回目の大統領選挙が、5月23日と24日に行われる予定だ。エジプト国内の選挙に先立ち、外国在住者の投票が行われたが、その結果は本選挙の前には、公表されないことになっていた。
しかし、エジプト人のせっかちが、すでに出た結果を公表してしまった。そのことは、各候補者への本選挙の投票率に、少なからぬ影響を与えるだろう。だがエジプト人の性格は到ってアッケラカン、事前に在外投票の結果を公表したことに対して、特別に厳しい非難も出ていないようだ。
その在外投票の結果によれば、ダーク・ホースが優位になってきたということだ。つまり、ナセリスト党のサッバーヒ氏や、ムバーラク政権最後の首相だったシャフィーク氏だ。
この二人には当選の可能性が全く無い、というのがこれまでの予測だったが、ここにきて急に、支持を増やしてきているということだ。それは、イスラム原理主義のムスリム同胞団の台頭に、庶民が嫌気をさし始めてきていることによるのであろう。
アブルフットーフ氏はムスリム同胞団から、立候補することを禁じられたために、穏健イスラミストと自称し、人気を集めているが、ムスリム同胞団から立候補したシャーテル氏は審査で失格し、その後に正式候補として立候補したモルシー氏は、あまり支持を集めていないようだ。
そうしたなかで、アムル・ムーサ氏は安定した支持を集めているようだが、一部新聞の下馬評では、旧体制派の人物だとして、彼の人気は3番や4番に付けられているものもある、つまり、ダントツの独走態勢にはなっていない、と言いたいのであろう。
しかし、他のマスコミでは、やはり彼に対する信頼が最も厚く、当選の可能性で1位につけている、と報じているものもある。シャアバーン・アブドッラヒームのような有名な歌手の支援など、彼には広い支持層がいるようだ。
ビジネスマンや穏健なインテリ、常識派の人たちから見れば、アムル・ムーサ氏が一番このエジプトの難局を乗り切るのには、適している人物ではないのかと思われる。
なぜならば、国家を統治した経験の無い人物が、いま大統領に就任したのでは、国内はもとより外国との関係を、うまく維持し発展させていけまい。エジプトはいま外国の援助を必要としているのだから、なおさらのことだ。そして、いまだに不安定なエジプト社会を安定化させていくには、軍や警察との協力がどうしても必要になろう。そう考えると、アムル・ムーサ氏が一番いいと思えるのだが、エジプト国民はどう判断するのだろうか。