映画グリーン・ゾーンは、2003年サダム体制が打倒された後の、イラクの様子を描いた映画で、CIAや軍人、ネオコンなどの話が満載されている、実に興味深い映画だ。
友人が自宅に招いてくれ、どうしても見せたいというので出かけたのだが、その鑑賞の後で彼は『アメリカにもまともな人間がいるんだ。』と力説していた。多分彼はアメリカ社会とアメリカ軍、CIAなどの、全てが良識を失ったとは思いたくないのだろう。
もちろん私もアメリカ人の間には、いまだに沢山の良識派がいることを信じているし、アメリカの実力も十分分かっているつもりだ。経済的にアメリカは相当体力を落としたといわれているが、いまだに確実に世界のナンバー・ワンの実力を有している。
アメリカの経済的衰退が叫ばれても、誰もアメリカ・ドルに代わりうる、新たな世界の基軸通貨について、語れる者はいない。
アメリカは軍事力でも、ナンバー・ワンであり続けている。中国の軍事予算の急速な伸びが話題に上り、明日にでも中国が世界の軍事大国にのし上がり、アメリカを凌駕するかのように言われているが、中国にはいまだにその実力は育っていない。
実際の戦争が起こった場合、中国の軍事力がどれだけなのかが分かろう。軍事力は兵器とそれを使う人たちの錬度、精神力と責任感などが統合されて実力が発揮されるのだ。
映画の中ではある軍人が、大量破壊兵器のありかを上部から言われて探しに行くのだが、何処からも出てこない。それで情報源は誰なのかと探っていくと、サダム体制のナンバー2の人物であることが分かる。
軍人はその男を追い詰め、最後には二人で話し合うのだが、そこでその人物が語ったのは『アメリカ政府と取引したということと、大量破壊兵器は1991年に、すでにあきらめて開発していない。』という内容だ。
軍人はアメリカ政府が、大量破壊兵器が存在しないことを分かりながらも、イラクに軍事侵攻したということを知り、イラク戦争とはなんだったのかという疑問を、視聴者に投げかけている。
今では中国が日本に代わり、ナンバー2の経済力を有するに到ったが、そのなかでアメリカはアジア地域に、軍事的関心を移したといい始めている。今日映画を見た後で、私が彼に言ったことは『米ソの冷戦時代とは違う、新たな冷戦が始まっている。』ということだった。
そして、『アメリカが始めた中国との冷戦は、ソビエトが相手のときとはまるで勝手が違うだろう。』ということだった。中国政府や中国人の発想は、欧米人とは全く違うのだから、ソビエトを相手にしたときとは勝手が違うのだ。
その結果、アメリカは下手をすると、あり地獄にはまってしまうかもしれない。その前例はベトナム人を相手にした、ベトナム戦争だったのではないのか。なお私はこの映画を、飛行機の中でだいぶ前に見ていた。