『エジプト初の立候補者討論テレビで放映』

2012年5月13日

 

 5月11日の金曜日に、エジプト初の大統領候補者テレビ討論会が行われた。この番組では元外相で、アラブ連盟事務総長を務めたアムル・ムーサ候補と、ムスリム同胞団から離れて立候補した、アブドルモナイム・アブルフットーフ氏が壇上に立った。

 このテレビ番組の討論会は、エジプト国内外で大きな関心を持たれ、注目された。なかでも外国に居住する、600万人とも800万人とも言われるエジプト人の間では、候補者選びの最大の関心事となった。

 これらのエジプト人は、湾岸諸国を始めとしたアラブ諸国と、ヨーロッパ、アメリカに居住しているのだ。投票のために帰国することが出来ない彼らにも、最寄の大使館で投票が、出来るシステムになっている。

 このテレビ討論会を通じて、エジプトの次期大統領はアムル・ムーサ氏か、アブドルモナイム・アブルフットーフ氏が就任することが、ほぼ確定したのかもしれない。

 ナセリストの候補者であるアハマド・サッバーヒー氏が、二人を追い上げていたが、今回のテレビ討論会の結果、距離を広げられたのではないかと思われる。それは二人の候補者の非難合戦が面白かったのと、迫力があったからであろう。二人は背広にネクタイという正装で、この番組に挑んだのだ。

 この二人の候補が残ったことで、エジプトの大統領選挙はムバーラク体制の香りを残す、旧体制というか旧官僚のアムル・ムーサ代表と、イスラム原理主義核組織の支援を受け、彼らを代表する形になった、アブドルモナイム・アブルフットーフ氏の一騎打ちになった感じがする。

 エジプトのカイロ市では水タバコ屋に庶民が集り、二人のテレビ討論に聞き入った庶民の間でも、熱い討論が展開されたようだ。例えばその聴衆の一人は『アムル・ムーサ氏は旧体制派と突っ込まれたことに、十分な反論をしなかったことが不利になるのではないか?』というものだ。

 また他の聴衆は『非難合戦で二人とも傷ついたが、アブドルモナイム・アブルフットーフ氏の方のダメージが大きかったのではないか?』という具合にだ。

 二人のテレビ番組での論点は、税制、警察システムの改正、教育制度、医療制度、軍に対する対応などといったものだったが、アムル・ムーサ氏はステーツマンと言う立場から持論を展開し、アブドルモナイム・アブルフット-フ氏は国民を統合する代表、という立場から持論を展開したようだ。

 エジプトの大統領選挙は、5月23,24日に実施されるが、ここで過半数を取る者が出なければ、トップ二人が残り、6月に再選挙が行われる。これからますます大統領選挙運動は過熱していこう。不測の事態もありえよう。