石油もガスもその他の地下資源も、ほとんど無いに等しいシリアで、何故1年以上も混乱が続いているのだろうか、といぶかる人もいるだろう。その疑問に対する答えは『シリアのアサド体制が独裁だから。』というのでは、不十分であろう。
以前から思っていたのだが、シリアはトルコと同じように、エネルギー輸送ルートとして、大きな可能性を持った国であることに、欧米が注目していないはずが無いということだった。
イラン、イラク、そして最大のエネルギー供給国である、湾岸諸国のガスや石油を、シリア経由で地中海側に運び出せば、極めて効率的に産出国から消費国に、エネルギー資源を運ぶことが出来よう。
以前、イラクとシリアとの関係が悪くなかった時期には、イラクの石油がシリアを経由して、地中海から欧米市場へと移送されていたのだ。もし、これからそれを再開しようと思えば、最も高低差の少ない近い効率的なルートの調査は、すでに済んでいるということであり、多少の修復を加えることで可能となろう。
シリアのアサド体制を打倒し、欧米の言いなりになる新体制を樹立すれば、この問題は解決され、新設の輸送パイプラインが誕生することに、なるのではないか。
湾岸諸国やイラン、イラクだけではなく、このパイプライン・ルートが完成すれば、中央アジアのトルクメニスタンやカザフスタンのエネルギー源にもリンクすることが可能となろう。すでにイランとトルクメニスタンとの間には、パイプラインが敷設されているのだ。
そうなればトルクメニスタンやカザフスタンは、ロシアの強い影響を受けずに、西側市場にエネルギー資源を輸出することが、出来るようになり、結果として、西側諸国は中央アジア諸国をロシアから奪い、自陣営に引き込むことが、出来るようにもなろう。
シリアの首都ダマスカスでは大型の爆弾テロが起こり、50人以上の人が死亡し、100人以上の人が負傷したと伝えられている。それを『アサド体制の残忍な強圧政策』と受け止めるか、国際的な謀略に基づいた作戦の一部とみなすかは、それぞれであろう。
物事は広く網を張って考え、全てを疑って検討する必要があろう。世界の国々が考える政治や軍事は、日本人のような『善意』を前提とはしていない。強盗の論理が、最前面に出ているのだから。