1979年に起こったホメイニ革命以来、イランはベラヤト・ファギと呼ばれる神権政治体制が続いている。つまり、イスラム法学者によって統治する国家になったのだ。そこには何の間違いも無いはずなのだが、そうは行かなかったようだ。
アハマド・ネジャド氏が大統領に就任して以来、イランでは神権体制に対する不満が暴発している。先の大統領選挙ではそれが頂点に達し、イラン国内は大混乱となった。
今年は国会議員選挙が3月と5月の二度に渡って行われたが、結果はアハマドネジャド大統領派に、極めて不満足なものとなった。その理由は経済問題の悪化であろう。食料やガソリンの高騰は、大衆を苦しめている。
アメリカを中心とする世界が、イランとの経済関係を縮小し、その包囲を強化したために、イラン国内では物価が上がり、庶民が生活物資を手に入れるのが、困難になってきたからだ。
アハマド・ネジャド大統領はイランの神権体制の下で、初めて国会で追及されるという、不名誉な立場に立たされた。それは公金を不正に引き出し、自派に有利なように、国民に対する買収資金として、使った嫌疑がもたれたからだ。
このことは、ハメネイ師を激怒させ、結果的に、アハマド・ネジャド大統領は国会で追及されることになったわけだが、アハマド・ネジャド大統領とハメネイ師との間には、これ以外にも対立する問題があった。それは情報大臣の人事をめぐるものだった。
今回の選挙結果で、ハメネイ師を中心とする保守派が勝利したことは、アハマド・ネジャド大統領に対する国会での追及が、ますます厳しいものになるということであろう。加えて、アハマド・ネジャド大統領の任期は2013年までとなっているが、国内外政策を進めるうえで、国会はそのつど反対に回ることが予測される。
さて今回の選挙結果を受け、アハマド・ネジャド大統領は指導力を弱体化することになるわけだが、今後イランは核開発を、どうして行こうというのであろうか。ハメネイ師はイランの核開発について、あくまでも平和利用であり、電力と癌治療のためのものだと説明している。
それをまともに受け止めるほど、世界のイランに対する見方は甘くは無い。選挙結果を受けて、アハマド・ネジャド大統領が大きく舵を切るには、イラン国民の総体が核開発推進を支持していて、簡単ではなさそうだ。
ハメネイ師がアハマド・ネジャド大統領に、どう対応していくかに、イランの核問題の今後が、かかっているということであろう。