ヨルダンにもどうやら明確な形で、アラブの春が訪れているようだ。ヨルダンでは最近になって、デモが頻繁に起こっており、しかも、そのデモは全国規模に広がり、参加者も各層に広がりを見せてきている。
そのデモはヨルダン政府の決定に真っ向から挑戦するという、極めて危険なものに変化してきている。例えば、5月4日に起こったデモは首都のアンマン市を始めとし、全国の7都市で行われた。今回のデモは、1994年にヨルダン政府がイスラエルと交わした、ワーデイ・アラバ合意に反対するものだった。
デモ参加者たちはその理由を幾つか挙げているが、一つはイスラエルが水の分配を、合意通りには実行していないというものだ。水資源の少ないアラブ諸国では、水の問題は今後も最重要課題となっていこう。
次いで、デモ隊はエルサレムの管理問題について抗議している。ヨルダン国王は基本的に、エルサレムのアクサモスクを管理する立場にあるが、現実にはイスラエルが支配しており、国王の意向は十分反映されていない、というのが実情だ。
デモ参加者のもう一つの抗議項目は、ヨルダン川西岸地区へのアクセスの自由が、保障されていないという点だ。これらのいずれの抗議項目も、ヨルダンのもともとの住民よりも、パレスチナからの移住者の要求であることは、誰にも分かろう。
デモ参加者の中心は青年層、左翼人士、そしてムスリム同胞団ということだが、その大半はパレスチナ人で、ヨルダン国籍を持っている人たちと、まだヨルダン国籍を得ていない、パレスチナ難民ではないのか。
こうしたヨルダンの最近の状況を見ていると、先日レバノンの学者がイランのプレステレビに行った、コメントを思い起こす。レバノン国際大学のジャマール・ワキーム教授は『西側はヨルダンをパレスチナ人の、代替国家にしようとしている。』と語っているのだ。
彼によれば、アメリカに従順なイスラミストたちが力を持ち、ヨルダンをパレスチナへの帰還の、ベースにするというのだ。彼らパレスチナ人はヨルダンを、自分たちの国にしてしまうことになろうというのだ。
結果的に、イスラエルは全ての占領地を確保することになろう。イスラエルはパレスチナの地を追われたパレスチナ難民が、パレスチナの地に帰還することを受け入れはすまい。1948年にイスラエルは70万人のパレスチナ人を追放したが、それと同じことが近い将来起ころうというのだ。
いまヨルダンで起こっているデモは、ジャマール・ワキーム教授が予測している結果を生むことが、十分に現実味を帯びてきているのではないか。