『カダフィがサルコジの選挙資金提供の虚虚実実』

2012年5月 3日

 

 フランスのサルコジ大統領が選挙に際し、リビアのカダフィ大佐から選挙資金を供与されていたというニュースが、しばらく前に伝わってきた。これには尾ひれが付いて、カダフィ大佐がユダヤ系でありサルコジ大統領もユダヤ系だから、裏で繋がっていたのだという情報も、まことしやかに語られていた。

 多分、カダフィ大佐がサルコジ大統領に選挙資金を送ったのは、事実ではないかと思われる。しかし、つい最近になって、リビアの暫定統治組織(NTC)の代表であるムスタファ・アブドッジャリール氏は、そういう事実は無い、書簡は偽物だと断定した。

 当然であろう、彼がリビアのトップに就いたのは、イギリスとフランスが革命を、援護してくれたからに他ならないからだ。もし、サルコジ大統領が二の足を踏んでいれば、革命に立ち上がった反カダフィ派の戦闘員と、中心になる人々は、ことごとく殺害されていたであろう。

 したがって、ムスタダ・アブドッジャリール氏は今回の事実否定により、サルコジ大統領に対し、革命支援の恩に報いたということが真相ではないか。もし、サルコジ大統領がカダフィ大佐から、選挙資金を受け取っていたということになれば、近く行われる選挙で、サルコジ大統領は極めて苦しい立場に、追い込まれていたろう。

 死人に口無しという言葉が日本にはあるが、リビアでは死人の語ったことや行ったことが、リビア国民全員を走らせているようだ。カダフィ大佐が国内に分散して隠匿したといわれる、莫大な金額の隠し場所をめぐり、いまだにリビア国民の間で、争いが絶えていない。

カダフィ大佐の子息サイフルイスラーム氏が、ジンタンでミリシアに捕まり長い間留められていたのは、そのカダフィ資金の隠し場所を、聞き出すためだったからでは無いのか。

ヨーロッパで水死体で発見されたガーネム元石油相(一時期は首相も勤めた)は、多分口封じのために殺されたものと思われる。彼の立場では、カダフィ大佐がヨーロッパの誰に金を渡していたのか、リビアとの取引でヨーロッパの企業はどんな裏取引をしていたのかを、知ることが出来たからだ。

その全てが明らかになれば、単なる個人的なスキャンダルでは済むまい。こうしたスキャンダルには、フランスのサルコジ大統領ばかりではなく、多くのヨーロッパの要人が、関与していたものと思われる。

それらのスキャンダルの一部は、将来明らかになろうが、それは氷山の一角に過ぎまい。その意味でカダフィ大佐の死を、喜ぶ人たちがいるということだ。